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21.緩やかな幸せ そんな些細なことが、いつの間にか幸せだと思うなんて。 人は単純で、それに甘んじていられる自分は、とてもとても恥ずかしくて。 そんな些細なこと。 「さーかーえーぐーちー。」 人の波に奪われる思考を、唐突に現実に戻す間の抜けた声。 声の主が誰かなんて振り返らなくてもわかるから、少し間を置いて、首だけで振り返る。 ぶんぶんと手を振るやっぱり、間抜けな姿。 ホントに球児?そんな立ち姿で。 オレはたぶん、相当呆れた顔をして溜息をついた。 途端に、跳ねるようにして駆け寄ってくる、犬、まるで大型の。 「次移動?オレも移動なんだー。」 「…え、阿部と花井は?」 「栄口がいたから、さきに行ってもらった。」 満面の笑顔で、移動中なんだからそんなに長くいられるわけでもないのに。 いちいち駆け寄ってきて、本当に間抜けだなぁ。 にこにこと邪気のない笑顔で、そんな顔を見ているとオレまで顔が緩んじゃいそう。 馬鹿、ここはまだ学校の、それも人目につきまくる廊下だっていうのに。 ちょっと視線を背けたら、不思議そうに眼を丸めて。 空気読んでよ、馬鹿。 「で、どうしたの?何か用?」 「用なんかないよ、顔見たかっただけだもん。」 「水谷、TPOって知ってる?」 「時と場所を考えろって奴でしょ?それくらい知ってるよ〜。」 まるで考えて動いてますよ、とでも言いたげな顔だな。 あのね、廊下で堂々と恋人みたいな話するのは時も場所も考えてない証拠なんだけど? にへら、と笑う、幸せそうな顔。 そんな顔で笑わないでよ、こっちまでそんな顔しそう。 あーあーあー恥ずかしい、何が悲しくて真昼間っからこんな―――。 「栄口はいや?廊下じゃ会いたくない?」 「え?いや…あの、そうじゃなくてさ。」 「?」 「…人が見てるだろ、恥ずかしいんだって、そういうの。」 というか、バレたらよくないでしょ、いろいろ。 一応こう、人の倫理を外れてるわけなんだし、騒ぎになったら面倒、とか。 そういうことを、水谷は考えられない?いや、考えないのかな? じゃなきゃ言ってるそばから手を握ったり、しないよね。 「うーわー、今の超可愛かった、栄口かわいー。」 「…あのね、そういうのが恥ずかしいんだって言ってるんだけど。」 「照れてる栄口可愛い、廊下とかであったら、いっつも恥ずかしそうでさ。」 ――――わかってやってたのか、天然で何を考えてるのか全然分からないよ。 ぎゅーっと握られる手、平温で温かい。 だけど放してくれないな、人目を集めてるのわかんないかな? 「だいじょーぶだよ、栄口。」 「…何が?」 「邪魔されないとこ行こ?オレ、今ずごい幸せ。」 何言ってんのか、こればっかりは理解できなかった。 途端に引かれる手、あああこれはサボりコースだ。 ―――まぁ、それもいいんだけど。 手は握られたまんま、相当一目は引いている。 あぁでも今更なのかもしれないなぁ、オレの知りあいは誰も自重してないし。 何しろ自分の、…恋人でさえ自重しないわけで。 二人きりになったら、今日こそはちょっと怒ろう。 いつまでもただデレデレしてるだけじゃいつか痛い目見るんだから。 ――――仕方ない、今日くらいはこの幸せに…。 「水谷!!オレまだサボるって言ってないんだけど!」 「あとで巣山に謝ればいいでしょっ、早く行こう!」 「もう…水谷はホントに馬鹿なんだから…。」 「馬鹿でいいよー、オレ今幸せだからさ!」 緩やかな幸せ―――こうして手を握り合うことが、幸せっていうだけで。 END うっは、内容がクサイ…砂吐きそうだ(自分で書いたんじゃないかw 水栄は現時点で暗いものしか書いてないから、ついついこういうゲロ甘に手を出したくなります…。 ああああ恥ずかしいなコイツら!!(お前が恥ずかしい |