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13.甘い果実 その果物は、不実な果物だ。 無理やりに谷底へと引きずりこんで、制約も知らない乙女の口にねじ込んで。 赤黒い実は美しいのに、それがかつては冥府の食物だった。 紅榴石もその別名に使われるほど、その実はとても綺麗なのに。 その花言葉は、あまりにも不名誉。 でもそれがその不実を表しているのだとすれば、あまりにも的を得ている。 「…ザクロ?」 「おぅ、秋丸にもらった。」 「…それを渡しにわざわざ?」 「渡すだけなわけねーだろ、それとも上げてくんねぇの?」 「あーはいはいどうぞ、ちょうど誰もいませんし。」 「おー。」 こちらが上げれと言う前に、さっさと靴を脱ぎ始めているということは、家族が外出中なことを知っていたのだろうか。 こういう突拍子のない訪問は初めてではないが、インターホンにドアを開けばそこに榛名がいるのはいつまで経っても慣れやしない。 榛名の家からうちまでは結構距離があるのに、榛名が来ると家の前には榛名の自転車が止められている。 十中八九、家から自転車で来ているのだろうが…よくもまぁやってくる。 制服のままやってくることもザラにあるから、練習帰りにそのまま来ている可能性も捨てられない。 にしても武蔵野から家までもやっぱり相当距離があるから、面倒くさいことこの上ないと思うのだが。 親ももう顔を覚えているし、風呂を貸したりもまったく抵抗がないらしい。 「元希さん、来るなら事前に連絡くれませんか?」 「めんどくせぇ、それにザクロあるし。」 「…それは今日に限ってじゃないか…。」 「準太ぁ、風呂借りていーか?全力で漕いだから汗だくでさー。」 「…どーぞ。」 ビニル袋に入ったザクロをぽい、と投げつけて、勝手知ったる風呂場へと駆けていく。 まったく自由な奴だ。 冷蔵庫に入れて置くべきか迷って袋を探すと、ひらりと一枚白い紙。 “榛名が突然訪問していたらすいません 明日引き取りに行きます 秋丸” …あぁ、秋丸さんも苦労してんだなぁ。 どうせこの人は泊まりのつもりで来ているのだろうから、秋丸さんのこの書き方も、こちらからすれば恥ずかしいことこの上ないのだが。 紙は放置してザクロは冷蔵庫に、と思ったが、以外に冷えている。 全力で漕いだのはこのためだろうか、本当に馬鹿な人だ。 すぐ食べる気だろうから、これは…包丁か。 台所作業は苦手だが、母親もいないし、やっておくほうが無難か。 袋の中のザクロは、6つ。 そんなにたくさんは、たぶん必要としていないだろう。 1つ出せば十分か。 ザクロの食べ方は、上手い方法を知っている。 母親がテレビでやっていたのを見て、ザクロが並ぶ時期にはよくやっていた。 上下を切り落として、水を張ったボールに丸ごと突っ込む。 そこから力技で適当な大きさに割り、水の中で実を取り出す。 実を外して、廃棄部を取り除いて、それからざるに流して終わり。 驚くほど簡単な作業。 これを知らなかったころはぷちぷちぷちぷち、一つずつもいでいたものだが。 適当な皿に盛ってみて、一口。 酸味のあとに、甘みが過ぎて、種が残る。 ザクロだ。 「あーっ!!何食ってんだよぉっ!」 「うおぁああっ、びっくりした、叫ぶ前まず声かけてくださいよ!!」 背中に衝撃。 びっくりした!いきなりタックルかましてくるとは、どういう了見してるんだこの人は!! しかも耳元で叫ぶなんて…。 反応は無視で、開かれたザクロにひたすら怒鳴っている。 勝手にもがれてんじゃねーとか、理不尽な人だ。 「お前ぇ、なんで勝手に食うんだよ、物事にはタイミングがなぁ!」 「何だよタイミングって!!」 「あっとこんなことしてる場合じゃねぇや、部屋行くぞ部屋。こうしちゃいらんね。」 がし、と腕を掴まれ、ザクロの盛られた皿ごと引っ張られていく。 向かう先はこれも勝手知ったるオレの部屋で間違いない。 どうも、鍵がかかることがよほどお気に召したらしく、オレが行くより来るほうが多いのは、この辺りにもあるんじゃないかと思ったり。 人の家に来ている自覚はあるのか?いやないな、でかい音を立てて家主を引きずって歩く辺りに常識があるとは思えない。 そんな奴にいいようにされてるオレもオレだ…。 引きずられて階段を上り、突き当たりの部屋が自室と言う奴で、うちで唯一の鍵がついた部屋。 やっぱり引きずり込まれて、そこでようやく腕が離れる。 よく見るとコイツ、やっぱりオレの服を勝手に着ている、せめて一声かけてくれ。 ザクロを座卓(榛名持ち込み)の上に放置して、また腕を引かれると、今度はベッドへぽーい。 「…聞くまでもないと思いますが、性急な理由だけお聞かせ願えますか?」 「だってお前、ザクロ食っちまったじゃん。」 言うなり、一粒。自分も口の中へ放り込む。 種まで食べるタイプだな、と考え込んでいる間にいつの間にか上乗りにされ―――。 あぁ、わかったこの人、間違いなく勘違いしてるな。 吹き込んだのは、誰だ?まぁ、秋丸さんではないだろうけれど。 いらない知識とはこの事だろう―――。 * 色気の欠片もなくぽいぽいと服をはぎ取られ、先ほどまでの性急な態度とは打って変わって、焦らすような手付き。 普段は利央といい勝負が出来るほど馬鹿なのに、こういうことばっかりうまくて。 するすると肌を撫で上げ、首筋のほうにじわりと舌が這う。 「んん…っ…ふっ…ぅ…。」 たったそれだけで何処かしら高揚してしまうのは、もう慣れからだと思いたい。 首筋に埋められた黒い頭が顔を起こすと、頭を引かれて唇を吸われた。 割り込むように舌が続いて、これもまたいつにもましてじんわりとした動きで攻め立ててくる。 その間も片手は肌を擦り上げて、くすぐったさと腰にくる衝撃。 焦らされて焦らされて、中核に触れられるころにはもう少し、意識がくもっていた。 少しだけあせりの混じり始めた手つきが触れる度に跳ねる体は悔しい。 いいようにされるのは気に食わないが、コイツが相手だとどうしようもなくなる。 どうしようもない、馬鹿野郎。 「…準太、入れんぞ…っ。」 「んなこと…イチイチ聞かないでくださっ…!」 圧迫感。 散々焦らされた結果抵抗もなく、スムーズに動く熱い塊。 ぐ、ぐ、と押し付けられる度に、高い悲鳴が口から零れる。 「ふ、ぅ、ぁっ、ぅく、あっ、あぁ…っ!!」 「うわ、やべ…いつもの数倍エロく見えんな…っ!」 ぐぁ、と突き上げられて、あっけなく達した。 どちらかが先にということはないから、その点だけは安心しているのだけど。 肩で息をしているとぐったり上に圧し掛かってくる。 75sが圧し掛かってくるのは正直に苦しいが、こういう時だけは許してもいい。 同じように肩で息をする、赤い顔。 その顔がなぜか「何かなぁ?」という顔をしているので、もう言ってやろう。 ホントにただのバカだから。 「…元希さん、誰に吹き込まれました?」 「あ?…何お前、知ってたとか…?」 「ザクロは媚薬だって奴でしょ、んなもん迷信です。」 「………ええええぇえええっ!?」 「皮を乾燥させた奴は麻薬の成分含んでるっていいますけどね。」 「…実は?」 「フツーに健康にいい果物らしいですよ、煎じて飲むと虫下しになるとか。」 「虫?」 「副作用が強くて、最近じゃ奨励されてないらしいけど。」 「…なーんだ。準太は物知りだなー。」 「元希さんが知らないことくらいは知っとこうと思って。」 もちろん、その方がよっぽど量は多くなるのだけど。 この阿呆はそれくらいしてやらないと、ホントにどうしようもないらしい。 甘い果実―――当商品は大変強い中毒性を含有しています、ご使用の際は―――。 END あおり文だけやったらめったらエロチックにしてみました。 実際は榛名は馬鹿ですというのを主張したかっただけ。 うちの準太はかなりの可能性でかしこい子です、たぶん馬鹿なのは和さん相手の時だけ。 準太は元希さん、榛名サンは準太。ナチュラルにファーストネームです。 準太が敬語なのは単純に意地悪してるだけ、でも元希さんっていうのはたぶん呼びやすいんかと(投げやり コイツらなんか違和感ねぇ。 ただ唐突に、榛準が書きたかった2008年夏のこと(ぇ ザクロは人の肉の味がすると言いますが、そんなことはないですよ。 いろいろ調べてたらホラーゲームに行き当たったので、マジビビりしてました。 スプラッタなゾンビモノ+完全深夜だったので、完全アウトゾーン。 それはゾンビ化のことをザクロ化というらしく、BADENDばっかり集めてるサイトさんに行き当たってとにかく怖かった。 曰くそのゲームもザクロ=エグイものなんスけど。 まぁ…神話とかでもあくどい果物として使われてることが多いので←ハーデスとペルセフォネのお話とか でもホントにおいしい、甘酸っぱくて。 甘い果実で媚薬効果のある果物探そうと思いだすあたりがダメ人間な証拠かなー(ぇえ でもざくろの味はマジ怖かったっす。 でもこの話は怖くないんですよ、全然、榛名がバカなだけの、割とほのぼの(ぇ |