9.さわやかな風




初めての景色。
目の前にあるのは、決して平坦とは言えない、それでも広大な大地。
派遣ばかりの自分にとっては、その景色はそんなに珍しいものでもない。
晴れ渡る空の気持ちよさも、忘れてしまったころ。
神官たちといる間は、そんな景色には飽き飽きしていた。




その飽きたはずの景色がなぜか新鮮に見えるのは、常に前を行く弟分のおかげだろう。
ひょこひょこと跳ね動く金色の髪。
新しいことに何より興味深々で、怖気なくどんどん歩いて行ってしまう。
まさか一緒に旅をすることになるとは。
止めても無駄だろうが、危ないことはしないでほしかったのに。
何より飽くことを嫌うカイルに、そんなことを言っても無駄なことは百も承知。
それよりは付いて回って、盾になるほうがまだマシな決断だ。
万が一でも危険な目に合わせようなら、カイルを知る者に合わせる顔がない。

そんなの、やってられない。




「ねぇロニ、あれがアイグレッテ!?」

「おぅ、俺にとっちゃあ見慣れた街だが…すげぇだろ?」

「うん!テンション上がってきたっ!」




疲れを感じさせないしっかりした歩調。
それどころか興味に釣られて、どんどん速くなっていく。
まだまだ全然子供、守ってやらないと、どうなってしまうのか見当もつかない。
いつまでも世間を知らない、弟。






















愛しい弟が成長していく中で、自分も持ってはいけない感情を抑えきれなくなって。
そんな感情が今までなかったかと言えば、冗談、違う。
知っていて知らん振りをし、笑顔で誤魔化してきた感情。
兄弟という枠を超えた気持ちがいつか抑えられなくなることも、目に見えていたことだ。
旅先で増える仲間、知っていく現実。
成長していく背中を見るのはそのころ、あまり好きではなかった。
もとより頼られたい性分で、物足りなくて仕方がない。

離れていく現実があまりにも鮮明だから、それを誤魔化すことに必死になって。

取り巻く環境は、一変する。
もっともっと成長し、離れていく背。





結局のところ彼にはもっと運命的なものが待っていて、兄貴というだけの自分に振り向いてくれることはなかった。





今では、それもいいと思っている。





ただ跳ねまわるだけだった金色の髪が、今は何よりも頼りがいのあるものに映る。
その背は決して、自分だけのものじゃない。
それでもいいんだ。
世界のために駆けずり回るというのは性に合わないけれど。
大事にしたいと思う気持ちは、変わらない、決して。














「いい風が吹いてるな…。」




旅立ちは、初めてのはずだ。
何故かその風に懐かしいものを感じてしまう理由は、今はわからない。
いつかわかるかもしれない。

前を歩く小さな背中が、つい昨日まで見ていたその背中の大きさが、目に染みる。
こんなに大きかったかという疑問が、掠めていく。
知らない。

だけど、そんな背も大事にしたいと思った。

草を揺らす風は、どこまでもさわやかだった。





さわやかな風―――丘を越えて行こう。そう行った君はいつしか無邪気さを忘れていく。




END







ロニカイ書けヌェエエエEEEEEE!!(ぇ
あれ?私ロニカイも嫌いじゃないはずなんだけど…?
どうもアビスほどフリーダムに愛し書くことが出来ないようです、謎だ。
たぶんあれ、ロニ視点で書こうとしたのが間違いなんだと思う(ぁ
短いところは、突っ込んじゃダメですよー(ぇえ