18.大切な人




そんなのイヤだ、と駄々をこねてもきっと届きはしないだろう。
知っている、そんなこと。
彼がそうと決めたなら、オレがいくら首を振っても君に届きはしないのだ。
そう、いくら叫んでも。
君がそうだと決めたことに、オレが口を挟むだけの権利も、力もない。
それでもオレの言葉が一つでも届くように、いつでもいつでもそう言う。
いつかはたった一つでも彼の胸に届くかもしれない。
何度となく失ってきた彼を、今度もまた失うよりは。
君がいくらそんな言葉は聞きたくない、とオレを罵っても。



「オレはリオンのこと、大事って思ってるよ?」

「…馬鹿馬鹿しい、そんな軽々しく言われて、信じろというのが間違いじゃないか?」



いつも誰よりも正しい論理は、オレの反論を許してくれない。
リオンが信じれないというなら、そうなんだ。
オレの言葉はまだ届かない、いくら嘆いてもいくら怒っても届かない。
わかってる、わかってる。
なら届くまで言うんだ、たとえいつまでも届かなくても、いつかは届くと信じること。
オレにはそうして、浅ましくても信じることしか出来ないのだから。








何度も何度も、失ったんだ。
水に飲まれる洞窟で笑む、彼を。
なんで彼でなくてはいけなかった?
なら代わりに、オレが残ったっていいのに、どうして彼を選んでしまう?

運命が憎い、オレの大事な人を奪っていく。

何度やり直しても。
何度も同じ道。
何度も同じ結末。

何故失わなくてはいけない、喪失感に狂ってしまいそうな運命さえあった。

大事だというその言葉を、信じてもらう日は来るのか?

そんな運命はやってくるのか?



刃が体を切りぬける、そのたびに、フラッシュバックしていく。
走灯馬、そんなもんなのか。



どの運命でも、どの結末でもその瞬間、オレは必ずその大事な人を思い出す。
黒い髪、あぁ触れたい。
黒い目、そんなに驚いて。
そうだこの運命でもオレ、また斬られているのか。

赤く染まる視界に、いつもいつもオレの大事な人は飛び込んでくる。
あの時のままの君がそこにいる。

手を伸ばす、懸命に。
必死な顔でオレに駆け寄る君に触れようとして。
オレの手は力が入らずただ空を振る、その手を取る、君の―――。

やっと会えた、また、18年も経ってしまったけど。
変わらない姿、永遠に綺麗な、黒いその姿。



薄れ行く意識の中で繰り返す、大事な人。
リオン、オレの大事な人。



―――馬鹿馬鹿しい、お前はいつまでそんなことを言うんだ。



リオンが大事だから、信じてくれるまでずっと。






―――馬鹿者…僕はもうずっと…。






意識は途切れる。
オレはいつもこれ以上先には行けなくて。

残る子の行く末を、ただ見ることしか出来ない。
いつも、その歯がゆさで。



リオン、オレの大事な人。
大事で、大切で、無二とないオレの愛する人。
18年前と変わらないその姿、隠して、隠し通そうとする姿をただ見つめるだけ。

問いかけたいことがたくさんあるのに、今度はオレが亡き人となっていて。

大事な人、彼はそこにいるのに、今度はオレが触れられない。



その神が信じられないことは知っている、だからオレはただ君に祈る。

どうか君が、困難に目を閉じることがありませんように。



大切な人、どうか、リオン。






―――とっくに、信じていたんだ…。







大切な人―――繰り返して言えば、君は拗ねてしまうから。




END








お題は頑張っても短くなってしまうようです、まぁ100もこなすわけだから仕方ないような…(逃げた
D2でスタリオ、スタンがバルバトスに斬られる〜から斬られた〜くらいの話。
実際リオンは駆け寄っては来ませんが、リオンの残滓くらいはそこにいたんじゃないかなーと思ったり思わなかった。
このタイトル、正直どのカプにも使いたかったんですが、スタリオが一番くさいセリフが似合うんですよね!!(ぇえ