10.見えない希望








寄せても寄せても、返す音はどこまでも残酷な響きのまま。

どこまで先があるのか、終わりなどあるのか。

轟々と響く水の音。

絶叫する以前の、仲間。

体中を満たす猛々しい水の流れ。

流れていくのは、瓦礫の屑。

打たれ、凹み、遠のく意識。



そして、唐突に冴えわたる。



もう一度、生きる理由を与えようという、悪魔の声。
いや、悪魔ではなく、神なのだから質が悪い。

そうして手に入れた新しい生。
また巡りに巡って、ようやく手に入れた新しい、仲間。
今度こそは失くさないように、今度こそは、自ら裏切らないように。
神を裏切ることなど、ようやく手に入れた信頼の前では、霞んで見える。
新たな生など、そもそも望んでいなかったのに。

そうして、手に入れた一瞬の幸せが、また消える。

叶わず消える、仲間の命。
果てる自分。

高々と笑う、神の声。




そうして、繰り返す。





場面はまたあの海底洞窟へと移り、僕はリオンとして、信頼した仲間の前に立っている。

大事な人を守るために何度も、シャルティエを携えて。

そのたびに何度も負けて、何度も何度も、濁流にのまれていく。

意識が薄れると同時に、また、新たな命を与えられる。

そうして手に入れた命で、カイル達に出会う。

また手に入れた大事な仲間、今度こそはと誓うのに。

何度やっても神には勝てず、無力のまま、大事な仲間が消えていく様をまざまざを見せつけられる。

そのたびに嘲笑う神。



進まない輪廻。



―――否定など、しない。



それが仲間と呼べる大事な存在を裏切った僕への、断罪。
望むべくして具現される、悪夢。

幸せなど、望めない。
あまりにも多くを裏切った僕に、幸せなど、望む権利はありはしない。
たとえそれが永遠に続く悪夢だったとしても。
甘んじて受け入れる、それが罪。

覚める必要など、ない。



それが悪夢だと思う弱い心も、いつしか麻痺してしまうから。









悪夢が終わりを告げた瞬間、僕を取り巻く暗幕は一気に取り払われた。
それでもまだ、抜けだせないでいる。
声をかけてくれる、大事な仲間もまだ、傍にいるというのに。


ふ、と目を開ければ、心配そうに覗きこむ、青い目。
きっとまた、心配をかけるようなうわ言をもらしてしまったのだろう。
いつになっても、毎晩のように見るループ。



「…また変な夢、見てたんだろ。」

「…あぁ、いつものことじゃないか…。」



「そんな簡単なことじゃ、ないだろっ…。」



歯がゆげな顔。
引き寄せて抱きしめてみても、きっと満足してくれない。
どこまでも続く悪夢が終わるまで、きっと彼は、満足しない。



「大丈夫だから、カイル。」

「…何が。」

「僕のことはいい、本当に。」

「…何が…!」

「…もう寝よう、カイル。」



返答も待たずに、目を閉じる。
不満げな声も反論もない、きっと腹のうちにこらえて、今は諦める。









なんて、きっと、ジューダスは思ってる。

彼が思うほど自分は諦めの酷い人間じゃぁ、ない。
大事な人のことになるとそう、絶対諦めたりしたくないのに。
ここで葛藤したって、ジューダスはきっと話してくれないって、わかってる。
当然だ。
それがジューダスの強さで、優しさで、―――弱いところ。
辛いのも見せないし、勘付かれたら、全力で隠す。

再び眠りに落ちた彼の髪を、そっと撫でる。
一度悪夢に取りつかれたら、唐突に目覚めるまでは瞳は開かない。
覆いかぶさるようにして、瞼の上に口付け。
せめて少しでも、罪悪感がなくなりますように。



「父さんも、仲間の人も、ジューダスのこと、恨んだりしないのに。」



世界の何人が彼を蔑む言葉を口にしようとも。
きっと父は、晴れやかな笑顔で彼を許すだろう。



「…それでも足りないなら、俺も全部許すよって、言ってあげるのに。」



それでも見えない希望を抱えて、きっと何もして、あげられないのに。





見えない希望―――進んでも進んでも、指先が暗幕を超えることは決してない。




END




前作のロニカイに対し、まったく悩まずストレートに書けたのはホント…どんだけジュカイ好きなの私orz
いえ好きですが、大好きですが?
たぶん、ジュカイに次いでカイリアが大変書きやすいと思われます。
うぉお…このままではロニカイ好きの表示に誤報が…!
おっかしいなぁ(知らないよ
エルレイン様に見せられた素敵な夢から覚められないジュ様と、そろそろいい加減にしてほしいカイルです。
悩みたいし、深い傷だっていうのも分かるんだけど、それが時効だってことをカイルは知ってるんです。
でもジュ様は聞き分けのない子なので、カイルが怒っててもスルーです。
最後の一言、私的にカイルは超キレてます。
ただでさえスタリオに嫉妬気味なうちのカイルですが、自分からそんな風に考えることがそもそも嫌だなー的な。
だんだんカイルが腹黒受けになってきてる…潤キャラ攻めが定着しつつあるのですが、カイルは受けですよ、精神的な部分は攻めですが(ぁ
あれが素の天然ではなく、意外と性格悪いほうの天然づくりだったらな…とか考えてしまう私はヤンデレ好き末期症状。