8.強い絆



閃光、というのか。
光しかないこの空間で、その認識が正しいのかどうかは、まったくわからない。
冷え固まった体、消滅寸前の音。
目の前で煌々と光り続ける、巨大な光。
優しげな男の声。

同位体。

ふ、と過る言葉。
特別と特別が重なって、運命的に生まれた、“俺”。
偶然にも運命が重なって、そうして出会った。
数奇な流れに飲まれて、今こうして、凄然と共にいる。
それが死の間際と知っているのに、こうして笑めている理由なのだろう。

音素で構成された自分とは違う、ちゃんとした肉体。
これがもう、空っぽ。
自分の中で燃えている。



譜歌が聞こえる、契約の歌。



誰が歌っているんだろう、この声はティアじゃない。
それでも耳になじむ優しい旋律は、どこかで聞いたことのある流れ。
柔らかなメロディ。

7つの歌。
攻め手と癒し手を、その旋律から分けて生み出す。
時には紅い雷を、時には天使の歌声を。
断罪と蘇生を巨大な旋律で行う。
ユリアは、そんなことをしていたのか。

その旋律は、どこまでも人を傷つけるものには見えないのに。

消える体が溶け合い、混ざり、微塵の光と化していく。



―――消えちまう、のか…。



死にたくないと言えるようになって、まだほんの少ししか経っていなくて。
ティアはそれを、傲慢なまでの生存本能と言った。
生きていたいと、思えるようになったのは、彼女の言葉もあって。
結局わかり合うことができなかった、自分自身の姿でもあって。

やり残したことならたくさんある。
会いたい人も、見たい笑顔もたくさんある。

それでも消える間近、どうしてその瞬間を、怖いと感じなくなったのか。



君といる。



もはや感覚の消えうせた腕。
お互いの体はもう、見えていない。




戦い合って、お互いの存在を、否定するだけしあって。
ようやく掴めた、それぞれの生まれた意味。
荘厳なまでの、生きる理由。
模造品、被験者。
そんな言葉でくくれない、絶対の理由。

同じ存在。
この世に二人といるはずのない、究極の偶然。
鏡のように見つめ合う、魂。
出会ってしまった、同じ顔、同じ鼓動。
ひだまりをかけて争うつもりなんて、少なくとも自分にはなかったのに。



―――こういうの、なんて言うんだろうな。



カッコイイ台詞は、思いつかない。
奥底から湧き出る、高揚。
この世でもっとも細く、もっとも強い線で結ばれた―――。
ガラス玉のように繊細で、それよりもっと硬質で。




混じり合い、溶け合い。
消えていく。

浮く感触。

再び目覚めるとき、きっと自分は自分では、なくなっている。
その時はきっとこの、もう一人の自分がすべてを背負ってくれるだろう。

その身に余りある信頼。

そうなることを仲間はきっと悲しむだろう。
でも、すべてを任せるなら、同じ存在である彼でなくては、いけない。

約束。

守れないかもしれない。

消えることは、怖くないのに。




生の全てを否定する、大爆発。
初めから被験者を生かすためだけに行われる、乖離。
そこに生きる意味を見いだせず、何度泣いても希望はない。



―――オレの代わりに、アッシュが生きる。



望みはしない、けれど。
劣化だから、とか、そんな意味ではなく。
生きてほしい、と思う。
待っている人が、いる。
自分にも、彼にも。
共に帰るなんてのは、夢のような話。



消えかけた体は、自分の本体とも言える“彼”とともに行かなければ。




大丈夫。
記憶は巡る。




すべてがこの先の幸に繋がるのであれば。
終着までに殺めた、人の数。
最中の獣に、狂信者。

悲しみは消えず、流れていく。



せめてそれに終止符を打てたのなら、この力をくれた君に、感謝する。
奪いとったことも事実、だけど。
その力を使わせてくれた君に、感謝する。

せめて平和であれ。



痛みもなく薄ら消えていく。
あとに残るのは、強烈な光。
目を閉じる。

熱い体。

いつになるだろう。
混じり合う中で、握り合う動作。
それが本当に彼の手を掴んでいるかどうかは、わからない。



―――…一緒に行けないってのは、ちょっと寂しいかも、な。



そんな半端な感情に奪われるほど、繋がった線は弱くない。




栄光が崩落する音を耳にするとき、光は天を突いた。
その瞬間までも、せめて多くの人が無事であるようにと。
せめて君が、無事であるように、と。





強い絆―――すべてに引かれた一線は、消え果てることなく弾き合う。




END






ヴァン撃破後のムービーで、鍵を突き立ててからのアシュルク。
ひらーんと降ってくるアッシュ書いてねぇな、ルクがすでにゲッツして状態ですね(何
アシュルクと書いたものの、全然アシュルクでねぇな!すみませ…!
でもしっかりアシュルク意識です、ついでにカルマも意識です。