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6.いつかの景色 「どうして、今知りました、みたいな反応したのさ。」 「…何がだ?」 「同じ顔だって、知ってたくせに。」 「あぁ…地殻でのことか?」 「そう。」 ここのところ、彼はよく訪れる。 ほんの数か月前まではお互い敵同士で、割と長い時間をかけて説得したのだというのに。 いつの間にかこうして、他愛ない雑談を交わすようになっていた。 彼の身元は、ダアトが保障している。 当時こそ事件の中心にいた六神将の一員、両国からも身柄の引き渡しを要求されていた。 アニスが強引に、両国首脳を説き伏せたのだという。 ディストのように馬鹿でもない彼に、牢獄は必要ない、と。 マルクト皇帝は、二つ返事で「じゃあいいんじゃないか?」と。 バチカル皇帝は、ナタリアにも説き伏せられたとのこと。 さらにはダアトから「導師のレプリカ」を強調されては、閉口せざるを得なかったらしい。 あれだけの大罪を犯して起きながら、とはいうが。 罪の意識はないという。 説得に応じた彼は、何の感慨もない声で告げる。 ただもう、やめる、とだけ。 それはエルドラントでヴァンを打倒した時のこと。 ローレライの解放を始めるルークを置いて脱出し、そのローレライらしきものが天を突いた時。 確かに乖離した音素が、そこに集結した。 人の形を取り戻した彼は、小さく呟く。 「何で生かそうとするんだよ…アンタはいないのに…。」 警戒態勢を取ったものの、彼はあっさりと投降した。 今もその意思は分からないし、ガイ自身、無理して話してももらおうとは思わなかった。 「素顔のシンクとも何回か顔は合わせたけどさ、でもなんか違うのかなーって思ってさ。」 「…違う?」 「いや違うな、違うって思いたかったかな…。」 「…。」 「変わりだとか、そんなことばっかり気にする奴がいたからな。」 「…あぁ…。」 仮面はない。 地殻で彼の仮面が落ちた時から、仮面をつけた彼は見ていない。 ルークがそうであったように。 イオンが、そうであったように。 自分なりの気遣いか、結局、彼には必要なかったらしいが。 まだ、代わりであるほうがいくらもよかったことか。 ただの肉塊として生を受け、預言に踊らされる。 自分の命を愚かしい生と決め付け、世界を壊そうとする彼。 失うものがないと言った、彼。 失うものがないだなんて、笑わせてくれる。 いないと、言ったではないか。 「コーラル城だっけ、初めて会ったの。」 「よく覚えてるな、あん時お前の素顔見たの俺だけだったけど。」 「…懐かしい、敵同士なのに、よく会ったりしてさ。」 これもまた、一つの友情というか。 シンクとは、よく会った。 町や野営地、どこにでも現れ、ただお互いの現状を聞き出し合う。 現状といっても、これからすること行くところについては黙秘だったが。 薬を取りに奥深い森へまで行ったというのに現れたときは、本当に驚いた。 ただその時彼は、「…何してるのか気になっただけ。」と言い残すなり帰ってしまったが。 今思えば、それはガイではなく、また別のことだったのだろう。 よく訪れてはそのことばかり聞き出すのも、今だからこそわかるのだけど。 存在をかけた戦場。 彼もまた被害者で、そんなものさえなければ、共に歩めていたかもしれないのに。 袂を分かつということそのものが、想定外だった。 それでも彼がレプリカなどでなく、生きる意味を知る人間だったなら? ヴァンの手を振り払うだけの何かがあれば、共に行けたのに。 もともと笑顔の少ない奴だったが、ここ最近は前よりも酷い。 笑わないし、無感動。 自分にも、言えることではあったけど。 「―――お互い、待ち人来らずって感じだよな。」 「…は?何のこと言ってんのさ…。」 「いくらなんでも気付くぜ。」 「…っは…何のことだか…。」 そういう言葉も、もう少し覇気のあるものだったのに。 失ってしまった二対の焔。 あれからどうなったのか、ガイはなるべく考えないでいた。 無事だと、信じるしか出来ない。 それ以上を望んでみても、何も出来はしないのだ。 不用意なことを口にすれば、お互いがお互いの首を絞め合うだけ。 触れ合わないことで、自分を保つことしか出来ない。 ただ懐古的な感情に浸り、現実から目を背けることしか。 待たずにはいられない、どうしても、帰ってきてほしい。 だからこそ、触れてしまえば脆く崩れ去ってしまうような気がして、触れられずにいて。 待ち続けているからこそ、こうして共にいるのかもしれない。 共にいた仲間達は違う、別の感情を抱いているからこそ、共に。 仲間意識、友達感情を超えた、それ。 その感情までも、懐かしいものと口にするのは本当に嫌で。 薄れていく、昔のものとして。 待っているのもの、同じ場所にいる。 決して手は届かず、その記憶はどんどんと薄れていく。 いつしか、消える。 でも、待つ。 帰ってこい、早く。 それが記憶となり果てる前に、消えてしまう前に。 “今”がまだ、鮮明である内に。 「…ガイと一緒にしないでよね。」 「うん?」 「―――あの時、アイツは確かに死んだんだから…。」 その眼はどこか、遠くを見つめる。 失ってしまった、懐かしい何かに縋るような瞳で。 その背は、何かに追いすがるように小さくて。 窓の外に見える空は、何時の記憶か、わからなくても。 たぶんそれはまだ、どこかで鮮明に輝き続ける。 忘れられない、一抹の記憶として。 いつかの景色―――その背に映る、遠く遠く過去の記憶は今も鮮明にありすぎて。 END シンガイシンって書いたくせに、前提にルクガイとアシュシンがうろうろしてます。 アビス捏造ED、きっとアリエッタも生きてるわ!(ぇええ そんなこんなでシンガイシン。 シンクとガイ様は、以前から交流があった模様。 シンクがホントに普通の人間で、ヴァンがいなかったらガイとは初っ端からすごい仲良しになってたと思います。 グランコクマのガイ様の屋敷にしょっちゅうやってきているとかいないとか。 |