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野球は、3ストライクで1アウト。 3アウトでチェンジ、3イニングで試合終了。 さんという数字 「3は二番目に小さい素数。」 「…。」 「そんで、フェルマー素数では最小。えぇと確か、次に小さいのは5だったっけ?」 「…おぅ。」 「十進数だと…条件下で循環小数に…。」 「分母に3を持つ既約分数を少数で表わすと。」 「そうそれ。」 「で?その3の…何が面白いってんだ?」 「日本の裁判制度は三審制で、野球のルールにも3はすっげー重要。」 「…田島。」 段々と生意気な口が煩わしくなって、睨みつけるとひらひらと手を振り返された。 屋上の入口を背にして、どんよりとした雲の下、田島は笑う。 にや、なんていう擬音が似合う笑顔で、乱れかけたシャツには触れもせず続ける。 「花井んとこって3兄妹じゃん。」 「…知らねぇ。」 「あっれ?知んない?下に双子がいんだぜ、似てないんだけどね。」 「へーぇ、それで?」 話し半分に耳に入れながら、まともに聞いてないことを主張するために、シャツのボタンを全部外してしまう。 覆いかぶされているにも関わらず呑気な調子で話を続けていた。 興味がないことはない、田島の話はどこで仕入れてくるのか知らないが面白いものばかりではある。 けど、テメェがしてぇからって呼びだしておいて、それはないだろう。 陽の下にいても焼けることのない部分に舌を這わせながら、一応の返答はする。 身体は的確に反応しているが、言葉がもつれることはない。 話しは面白いけれど、一枚めくればさして面白い人間というわけじゃなかったんだ。 浮気してみよう、なんて思うほどの人間でもない。 そうと結論付けたのは相当前の話だが、今も結局こうして話を交えながら、浮気に没頭してる。 コイツには花井がいて、オレには三橋がいる。 日に日におかしくなっていく自分や周りの人間のこと、客観的に見ていたはずが最近はそれも出来ない。 「3兄弟の長兄はいずれにしても模範的で、昔話においては大体一番最初に死んでしまう者。」 「…あー…あぁ、そうだな、ナラナシトリコウとかそうだもんな。」 「二男は大概愚かで、兄の言い付けを守ることも、弟の助言を受け入れることもない。」 「たいがい我儘とか、自尊心が強いとか…3匹の子ブタとかそうだよな。」 「そして三男は聡明で行動力があり、物語の主役を振られる特別な人間だ。」 「…今日は随分饒舌だな?」 「最近つまんねーって言ってたじゃん、刺激ないだろ?」 「おぉ、あんまりおもしろい話もねぇし、まぁ変なことはしょっちゅうおこってっけど。」 相変わらず西浦は物騒な事件ばっかりで、今日もその関係で時間が出来たからこうしてる。 銃声がしようが、爆音がしようが、―――人が死のうが、オレ達は特に変わらない。 いつものように笑顔で野球して、それ以外の時間は適当に生きていくだけ。 おかしな日常が板について、おかしさを感じることもない。 西浦がどうなろうと、とりあえず野球が出来ればいいのだ。 それはオレだけではない、野球部の面々はただその欲求だけ。 ―――、一部を除いてだが。 「うちって3兄弟は少ないんだけど、二男とか多いんだよね。」 「…オレは長男だけど?」 「阿部はとっくに頭おかしいだろ。」 「不本意なこと言うな。」 「西広も最近段々辛そうな顔見ねぇけど。」 「…花井か?」 「うん、どーもまだこの状況に馴染んでないよねーってこと。」 噛みつくように首筋を吸い上げても、反応がない。 なんだか一人で欲情しているような気分になってきて、嫌だ。 感じて歪む顔が見たいからしてやってんのに、反応がないんじゃ面白くない。 くすぐるように肌を撫でて見ても、田島は言葉を濁さない。 「長兄は賢いけど、中途半端でそれ故に長く長く苦しむんだ。」 「…。」 「早く常識なんて忘れてしまえばいいのにな。」 「………。」 「早くおかしくなってしまえばいいのになぁ。」 どんよりと濁った空を見上げて、田島は含みもなく言い切った。 純粋にそれを求めている無邪気な声で、論を語りながら、同じ口で。 何を考えてるのかさっぱりわからない。 けれど初めて感じたあの異常な興味が戻ってくる。 世を諦めた人間が行きつく先を知っている、コイツの目。 だから堕ちることを求めるのか?同じ口で、同じ心で。 「3ってさ、結構大事な数字なんだぜ。」 「知ってる。」 「タロットのさ、大アルカナの3番目は女帝。」 「…女帝?」 「そ、意味知ってる?」 「知らん、興味もなかった。」 「正位置なら、繁栄や豊穣。」 「…。」 「逆位置は挫折、軽率、虚栄心、怠惰。」 愛でる手を止めて、思わず田島の顔を見た。 相変わらず空を見上げたまま微動だにしない、位置だけは。 にんまりと笑った口元は止まらない、言葉が零れてくる。 「今のオレたちみたいだよな。」 それが言いたかったのか、と思った瞬間、酷く自尊心を傷つけられる音が聞こえて。 オレを見とめてさらに笑う姿を見るのがイヤで、声すら聞きたくなくて。 唇に噛みついて引き裂いてやりたい、それを堪えて、首に手を伸ばした。 少しでもこの厭味が止まればいい、期待して見下げて、力を込めた。 さんという数字―――愚者と賢者の境界 END いつか書こうと思ってた阿田の続き、いやー放置期間長すぎて少年は憂鬱の設定すらぶっとんでたw 阿部との浮気期間が大分長くなってて、お互い後戻りしにくくなってきた時期。 例によって西浦がどんどんやばめな方向に行ってて、野球部ももう野球するためなら何でもする状況。 頭のおかしな野球部が常々徘徊しているらしいですが、つい最近までは先生はその野球部の良心だったようです。 が、何か契機でもあったのか変わってしまった様子、現在花井が葛藤中らしいです。 野球部があちこちでイロイロしてるのを知っていて、優等生故に悩みまくってる、と。 3に関しましては、とても深い思い出があるので、いつか使わせてもらおうと思ってました。 特殊な数字というか、3って面白過ぎる。 ついでにいろいろ危ない数字、でも好きだ、ひたすら3を追求するお話になったな…。 田島が浮気してる理由は少年は〜でも触れているものプラス、花井をさっさと不良にするための工作である、というのが大前提だったりします。ン |