母さん。


貴女は今、何処にいますか?



僕は今、幸せです。

―――ありがとう。







眩暈もただのガラクタであれば 9 
― Last, Hold me tight ―










........................................................................................................................................................
軽い。
そんなに身長差はないと思ってたのに。
こうして抱き上げてみると、栄口はすごく軽かった。
ご飯、ちゃんと食べてないのかもしれない。
普段みんなで食べる量はお互い結構なものだけど、食に感心は低いのかも。
でもいつかの合宿の時、分け合ったショートケーキ。
あれは美味しそうに食べてたよね、また――――なんて。

簡易ベッドに押し倒すのは、気が引けた。
だって固い、あくまで簡易治療用のベッドだ。
それよりも、ここは保健室なんだから、もう少しマシなベッドくらいある。
あの足で歩かせたくなくて抱き上げてしまったけど、抵抗はされなかった。
少し恥ずかしそうに小さくなってるけど、しっかり首に腕を巻いてくれてる。
野球の技量じゃ遠く及ばないけど、筋力だけは、負けてない。

白いシーツに、ゆっくり体を下ろす。
栄口は足の治療のために靴を脱いでたから、自分のだけ放り投げて、覆い被さった。
手慣れていると言われれば、それはそうだと思う。
いつか言ったような気はするけど、女の子は好きだったから。
だけど、栄口も相当手慣れてる。
行為に怯えてる気配は一切ないし、受ける身として必要な何かを、心得ているような反応。
―――お父さんと。
嫉妬しそうだ。

だけど今は、これからは、オレの。

唇を落とし手、口角を変えて、初めての深い深いキス。
絡まる動きにも躊躇はないし、その回数の多さは分かるけど。
そんなの関係ないんだよね、お父さんが抱いてたのは、オレの大事な栄口じゃない。
例え体は、そうだとしても。

着替えたばかりのシャツのボタンに手をかけて、一つ一つ外していく。
キスに没頭しておぼついていたんじゃ格好悪い、ぷつ、と一つずつ丁寧に外していった。

寒くないだろうか?

一度区切りをつけて顔を上げる、薄ら染まった頬が、可愛い。





「寒くない?大丈夫?」

「水谷がひっついてるから、大丈夫。」





なら大丈夫だ、こんなとこで変な嘘つくような人じゃない。
額に、鼻筋に、耳に、首筋に、順々に唇を落としていった。
並行してボタンを外したシャツも肩を腕を通して、下のTシャツ一枚に。





「これも脱がしちゃっていい?」

「水谷のやりやすいようにして?大丈夫だから。」





何されても大丈夫、というのはそれだけの経験を裏付ける言葉。
良かったことも、酷かったことも、いっしょくたになっているから。
万歳の要領でTシャツを引き抜いて、オレも上のシャツを脱ぐ。
改めて見る、栄口の体。
赤い痕も、酷い傷も、消えてない、消えることはないだろう。
肩冷やしちゃうな…風邪引いたら大変なんだけど―――。
そんなこと、心配しても、とは思う。
この先はもうない。
だけど、労われることならば、本当に大事にしたいから。



「ねぇ、ホントに寒くない…?肩何か掛けてたほうがいい?」

「そんなこと気にしなくてもいいのに…大丈夫だから、ね?」



栄口のシャツは残したままだから、急激に冷えることはないか。
冷え始めた肩を、撫でるように触る。
白い肌は滑らかで、しっとりと柔らかい。
滑るように走る手、肩はまだ、温かかった。
自分の残りのシャツも脱ぎ捨てて、お互いこれで半裸だ。
栄口の白い肌、今まで触れたくなかったかと問われば、そんなことは決してない。
喉鳴らしちゃいそう、女の子よりずっと綺麗で、可愛くて。
綺麗だって言ったら、栄口はきっと、首を振る。

見惚れていたのはほんの一瞬だと思ったんだけど、栄口にしたらそうじゃなかったらしい。
それまでオレを見つめていた視線が、唐突に彷徨い始める。
まだほとんど何もしてないのに、頬がさっきよりも赤くなってきて。





「…栄口…?」

「…あ、あんま見んなよ…は、恥ずかしい、から…っ。」

「え…?」

「水谷に見られてると思ったら…なんか、すごい恥ずかしい…。」





―――恥ずかしい、って?
それも、オレが相手だから?
うわぁ、どうしよう、すごいクる、ダメだよそんなこと言っちゃ…。
今までの何より、ずっと刺激的な一言だった。
嬉しい。
栄口はもうオレに嘘ついたりしない、だから。
ストレートな本音が、じわりと熱を灯す。
父とのそれは義務行為、オレとのこれは―――愛情表現、でいいのかな?
これ以上の名誉なんて、あるんだろうか?
嬉しくて嬉しくて、貪るように唇に吸いついた。
絡みつく舌の手慣れた感覚など、今は嫉妬心を煽るものでもない。
オレにしても、栄口にしても。

これは初めてのことだから。

赤い痕の上、塗りつぶすようにして吸い上げて。
消えることのない傷を、せめて覆い隠すように。
薄い肌にそろそろと舌を這わせれば、反応はどこか初々しい。
嬉しくなる、オレの手が、栄口を高めてる。
焦らすような手つきで肌の隅々を撫で上げて、徐々に荒くなる呼吸。
鼻にかかった吐息が、オレの聴覚から神経を刺激して。
熱が上がる。




「ん…ぅ…ぁっ……。」




上ずった声、普段とは違う、いつもの数倍、甘ったるい声。
いつの間にかオレの首筋を掠める腕、髪に絡みつく細い指。
求めて、求められている幻惑、ううん、これは真実だ。
学校の保健室で、背徳的な交わり。
落ちかけの夕日が、薄らと照らし出す裸体。
昂りが止まらない。
白い体を貪る、初めて触れる場所も、抵抗はない。
深い傷の上に唇を落とすと、びくん、と背が跳ねた。
痛い、よね。
強がって、絶対そんな風に言わないんだろうけど、これだけの傷だ、痛いに決まってる。
辿るように舌を動かせば、小刻みに体が震えた。
めちゃくちゃに折り重なった線、法則もなく、ただ引いてあるだけの赤。
傷の上に新たな傷をつけられて、痛くて痛くて、ホントは笑ってなんていられなかったんだろうに。
それでも笑うのは、弟のため。
オレが終わらせる、か。





「…みず、たに…?」

「え?あ、あぁゴメン、ちょっとぼっとしてた。」

「大丈夫…?」

「うん、続きするね。」





心配げな視線とかちあって、慌てて首を振る。
今はこの体に、集中していなくては。
謝罪の気持ちでキスをして、赤く尖る突起に手を這わせた。
体がぴくん、と跳ねる。
一つ一つの反応が、愛おしい。
壊したくない一心でなるべく優しく、傷つけないように触れる。
手先をずらして、ズボンに手をかける。
途端に栄口の目が一瞬、不安げなものに変わった。
こんなの、栄口にとっては何度もあったことのはず。
反応がとても経験を踏んだものには見えなくて、思わず心臓が跳ねた。
不意に顔を覗けば、潤んだ瞳が、不安げにオレを見詰めていた。



怖い?
怖いに決まってるよ、これは、栄口にとって存在を奪われる行為。
オレだから、っていうだけじゃ到底覆せないトラウマ。
不安げな顔をされたって当然、そうでないと、逆におかしいんだから。
ベルトにかけた手を一度離して、右手で頬を包む。
目は必死に大丈夫だから、と訴えかけているけど、そんなの強がり。
欲しくたって、焦るわけにはいかない。





「怖い?」

「だ、大丈夫だよ…!」

「嘘つかないでいいから、ちゃんと教えて?」

「………。」

「大丈夫って思えるまで、待つから。」

「―――少し、少しだけ、待って、やっぱりちょっと、怖い…。」

「うん、ちゃんと待つ。」





途端に歪む顔を見て、オレは苦笑した。
そんなに必死にならなくてもいいのに、お互いが望む形で終わりたい。
酷く傷つけるようなこと、奪うようなことは絶対にしない。
じゃれつくように髪を撫でて、キスをして。
くすぐるような、でもそれは歴然とした行為だと、酷くないものだと、わかってもらえるように。
何時間かけたっていい、オレは真夜中までここにいたって全然いい。
だから大丈夫、ゆっくりでいいから。
触れるだけの小さなキスを繰り返して、また甘い声を聞かせてくれるだけで十分。
唇にキスを、そう思って首筋から顔を上げた途端、ぐ、と引き寄せられた。
驚いている間に唇は重なって、滑るように口角はかわる。
長くも短いふれあいにようやく唇が離れるときに、一拍間を置いて囁かれる声。



―――もう、大丈夫。



本当に?
疑うわけじゃないけど、心配で。
不安げな素振りで見つめれば、小さく、だけどしっかりとした微笑みが返ってきた。
本当に、覚悟出来たのか。
むしろオレの方がドキドキする。
そ、とベルトに手をかけて、様子を見るように表情を除く。
気恥かしげに逸らされる視線、そっか、本当にもう大丈夫なんだ。
金属音を静かに鳴らせて、ベルトを外す、逆にオレが緊張しそうだ。
フックを外して、ファスナーを下げて、薄ら張るそこ。
明らかな反応に、気持ちが高鳴る。
下着の上からそっと触れると、体が小さく跳ねた。
ゆっくりと上下に擦り上げれば、栄口の息が段々と荒くなってくる。
口元を覆う手、きゅ、と閉じた目、―――感じてくれてるんだ。





「ん、ぅ…っぁ…あぅ…っん…!」





隙間から洩れる声は艶やかで、理性を弾き飛ばしそうな威力がある。
とんでもない、理性を飛ばすわけにはいかないのに。
軽く下着をずらして、しっとりとそり立つ部分を、直に触れる。
熱い。
少し強く擦り上げる度に、細い体は何度もびくんと跳ねあがって。
ズボンが窮屈…。
先の辺りをぐり、と刺激し、溢れだす滴を、一つも零してしまわないように。
細かい刺激を幾度か繰り返すうちに、声の大きさは張り上がっていく。
徐々に反応も激しくなって、そろそろ苦しいのかな。
そんなことを考えてるうちに、栄口は懇願するような潤んだ目でか細く声を上げる。





「…あっ…ぅ…みずたにっ…も、だめ…っ!」

「いーよ、出して…一回出したほうが楽でしょ…?」

「んんっ、や…あ、も、出…っ…ふあぁぁっ…!」





強情になる前に、少し強引にでも。
そう思って先端に軽く爪を立てると、数倍激しく腰を反らせて、先端から白いものを迸らせる。
余韻にひくつくそこから指を離して、手に残る白濁を擦る。
―――そいえば学校だもんな…。
潤滑油に使えるものも、軟膏くらいしか思いつかない。
そもそも、挿れるところまでするつもりなのか…?
したいと言えば頷く、栄口だもん。
指に絡むそれを呆然と見つめて、不意に視線を感じて目をずらす。
何とも言えない恥ずかしそうな顔をした栄口と目があって、だけどその瞬間、ばっと顔をそらされた。
枕のあたりに隠れた顔、耳のあたりから首筋まで、真っ赤。

――――恥ずかしいから?
可愛い、どうしようもなく可愛い。
反応の一つ一つが、とんでもなく愛おしい。





「そ、そんなの眺めんなよ…!」

「えぇ、だって勿体ないじゃん…?」

「も、勿体ないって…え…?」

「あ、と、その、ここ、慣らすものないし、なーとか…。」

「慣らさなくても大丈夫だよ…!」

「ダメ!!絶対ダメ!!」

「………。」

「無茶させたくないんだもん…使わせて?ね?」

「…っもう…。」





言葉とは裏腹に首は縦に触れる。
よかった、これで無茶は…挿れてからも問題だ。
でも出来るだけ大事に…、





「水谷…。」

「え?何?」

「もっと、その、無茶苦茶しても大丈夫、だから…。」

「!?」

「その、えと、た、…足りない、もっと…その…。」





理性の堕ちる音がした。

喰らうようにキスをして、ズボンをずり下ろす時間も惜しくて。
中途半端に脱がせて、その間も唇を貪る。
唇の間を縫って行く空気が煩わしいほど没頭した。
覆うものを剥いで、手探りでそこに触れる。
唇は繋がったままでもわかる反応に、一瞬躊躇が生まれるけど、首を振る。
望まれたら、しないわけにはいかない。
湿った音を響かせて、指を遊ばせる。
解すようにしばらく撫でていれば、じんわりと広がりを見せるそこに性急に差し入れて。
さすがにそこは慣れている、抵抗なく受け入れられてしまって。
舌が出す水音と、指の鳴らす音はどちらも淫靡。
音に飲まれるように、乱すことに打ち込んでしまう。





「ぅあ、んぅ…あっ…ふっ…んっ!」





声量は増し、間髪なく甘い声が上がっていた。
ダメだ、その煽り方は止めれなくなってしまう。
栄口のを塗りたくったそこはもうぐずぐずで、でも声をもっと聞き出したくなる。
ぐちゃぐちゃになっていくそこをまだ、もっと、じっくり荒らしていった。
指でこれなら―――。
初めてだと、そこは相当辛いと聞く。
よくよく慣らしても、かなり痛いって。
ここだけじゃ、受け身は満足行く終わり方は出来ない。

だけど、栄口は…。

そんなことを考えていると、堕ちていた理性が形を取り戻していった。
指の動きが緩慢なものになって、そして、迷う。





「みずたに…?」

「…妬けるっていうか、ちょっと悔しい。」

「なに言って…。」



オレの手が触れる前には開かれてしまった体。
嫉妬するようなことではないと、わかってはいるのに。
事実が遠い。
沈んだ顔をするつもりはなかったんだけど、雰囲気だけでも心配させちゃう。
ふとした瞬間に目が合って、栄口の手が、オレの頬を包んだ。
栄口も、困ったような顔してる。
しっかりしないといけないのに、だからへたれとか言われたって仕方ないのか…。





「…ごめん、こんな体で…。」

「ちがっ、そうじゃないよっ。」

「…?」

「変なこと考えちゃっただけだから…そのー…栄口、敏感みたいだし…。」

「ぁ…そ、れは…。」

「わかってる!なんていうかね、その…どうせならオレがそんなふうにしたかったというか…。」

「なっ…なに馬鹿なこと言ってんだよ…!」





途端に顔が真っ赤に染まる。
う、オレ今正直に変なこと言ったよね、本音だからこそ質悪いよね。
でもそう、本音。
ちょっとだけ残念だなって、思うだけで。





「ごめんね?いやなわけじゃないんだよ、残念だなってだけで。」

「馬鹿…。」

「もうココ、平気…?」

「―――…いーよ、たぶん、そんな慣らされたことないからわかんないけど。」





もっと慣らしたほうがいいんだろうか?
やっぱり少し勝手が違うから、実際ホント手探り。
でも栄口のそこは女の子のそこよりずっとぐずぐずになってるような。
試しに指を増やして、粘膜をする。
びく、内壁は震えるけど、抵抗というようなものではない。
もう一度確認するように顔を除けば、一瞬の快感に蕩けた表情で頷いてくれた。
自分のズボンのベルトを外すと、高ぶっていた分殊更緊張してくる。
窮屈だったそこが多少開放的になり、ずらして、うわ、熱い。
外気に触れてなお熱気を孕んでいて、視界に映ったのか、栄口が固まるのがわかる。
いざとなるとそりゃ、指よりずっと怖いはず。
それが普段から知る形(不本意だけど)ならまだしも、初めてのなら―――。





「…ホントにいいの?」

「何回も聞くな!いいって言ったらいい…!」

「それじゃダメなんだよー…。」



「―――こわくないから、水谷だし…。」






う、やばい、そういう煽り方はホントよくないって。
思わず前屈みになってしまいそうになるのをぐ、と堪えて、うぅ、何これ。
緊張感ないなぁ、オレってば…。






「水谷、あのさ…キスしてて、ほしい…。」

「え?挿れるとき…?」

「…うん、お願い…。」

「いいよっ、いくらでもする!」





現金な反応がおかしくて、二人して笑う。
落ち着く頃に、一呼吸。

…っうし。

栄口の白い足の間に体を割り込ませて、そこに宛がう。
先端が触れるだけでもぐずぐずのそこは熱くて、触れた栄口自身も、少し顔を歪めた。
少し態勢が難しくなるけど仕方ない、覆いかぶさって、唇を落とす。
割り込ませて、舌を動かすリズムに合わせて、じっくりと動きを進めた。
舌の絡みはお互い時々動きが止まって、奥に進むにつれて、深く、緩い動きに変わる。
根元まで食われた瞬間に、でも一拍置いて、唇を離した。
体の態勢が難しい、少し体を浮かせて、お互い深呼吸。
キスに没頭していてもわかる内壁の動きが強烈で、繋ぎとめた理性はまた吹き飛んでしまいそうだ。
思っていた以上に抵抗のないそこは、今もしっかり咥えこまれたオレのに、絶え間なく刺激を寄こす。
狭くて、熱い。
視界がぶれてしまいそうだ。

一度視線を合わせて、どちらともなく小さく頷いて。
初めはゆっくりとグラインドする、動きに合わせて粘膜がこすれていく。
徐々に徐々に律動を増して、熱さでオレも息が上がった。





「っ…すっご…く…あつ…っ。」

「ふ、ぅあっ…んっ…う…はぁっ…あっ…!」





もう止まんない。
思うままに突き上げる、乱れた水音が激しさを増して、これで止まれっていうほうがどうかしてる。

没頭してしまいそうな気持ちよさ、食いちぎられそうな狭ささえ愛しいのに。
































昂っていく中でオレはまた、泣いていた。
行為前の約束は、ちゃんと心の隅にあったから。
はたはたと零れていく涙が、栄口のお腹を濡らす。
気付けば栄口も、閉じた目の両方から涙を流していた。
ぼろぼろぼろぼろ、どんどん濡れていく。

考えたくなくて律動を速めて。
動くたびに双眸から止め処なく涙は流れる。
手が、声が、背中が、ここにあるのに。

昂りの限界を直前にして、栄口の腰を掴んでいたオレの右手が不意に引かれる。
切ない顔をした栄口が、オレの目をじっと見ている。
声は艶やかで、それでいて、痛い。
律動はそのままに視線はとまり、目が離せなくなって。

手が、白い喉に触れる。
熱いそこ。
こくこくと動く、荒い息を通す管。

終わりだ。

これで。

せめて。



動きは止めない。 

かつ、白い喉に触れた指は力を増していく。
食い込んで。

気道を潰す。

視界が霞んでしまって、何も見えなかった。
動きは止めれない、止まらない。
せめてせめて、こんなことでも、幸せならば。
どうやったら苦しくないか、そんなことわからないから。



詰まるような息。
艶やかな喘ぎ声は、もう消えてしまっていて。
オレはただこの悲しみを、食い潰すことしか出来ない。



ちゃんとしろ。
目をこする、掠れた視界を開いた。
苦しそうな表情。
これでも球技で、握力は相当だと思うのに。
苦しませてる、もう、もう終わらせてあげないといけないのに。
震える指はこれ以上の力を出してくれない。



もう少し、もう少しだけ力を加えれば、この細い首は折れてしまう。
イヤだ、でも、約束。
終わらせてあげる、そんなことしか出来ない自分が。

酷く悔しい。

今まで生きてきたすべてが、霞んでしまうほどに。

悔しい。



























――――っ…。


























ひゅ、と息が抜ける音。

はっとして、意識を戻す。

息苦しげな栄口の、口元が小さく動く。
























































「…………っく……い…っ。」





「…っ!!」









































「し、に……く、…な…っ…!」












































込めた力が抜けていく。
体の動きは、止まらないくせに。


徐々に呼吸を取り戻していく。
オレの手を掴んでいた手が、涙の発信点に覆いかぶさって、顔が隠れてしまって。























































「し、にたく、ない…っ!!死にたくないっ!!」












「栄口…っ!」

























































「母さんの代わりになんてなりたくない…っ!!ずっと、ずっと…!!








水谷と、一緒にいたい…!!」























































体勢も忘れて、栄口を抱き起こす。
細くて、あまり変わらないはずなのに、でも小さい体。

まだ、まだ温もりがちゃんとあって。

思い切りの力で抱きしめる。
首筋に回っていた栄口の手も、苦しいほど強く抱き締めてくれていて。

だけど止まらない律動は、徐々に激しさを増し。
熱い吐息は、さっきまでの勢いを取り戻して。

胸の内を閉めていく仄温かい思いが、ただの熱を越えていく。

達する直後の淡い意識、腹に熱いものを感じながら、奥にまた、熱いものを感じながら。
飽和する意識の中で、腕の中の小さな体を再度強く抱きしめる。



こんな思いは、これで最後だ。

切ない思いでは、絶対に栄口を抱きしめない。



弱い自分がどこまで戦えるのかわからなかった。
だけどこの大事な“恋人”がいる限り、負けないことだけは誓ってみせるつもりで。


これが最後だ。


殊更強く抱きしめる。

酸欠がたたったのか意識のない栄口の表情は苦しげで、でも、とても綺麗だ。



ガラクタなんて言わせない。



世界にすればとても小さな、だけど、すごくすごく大きな決意。

眠る横顔に微笑んで、背を撫でた。

そしてこれからは、終わらせない。









それは最後の抱擁で、始りを告げる優しい腕。



































NEXT





アッー疲れた!(何
鯨がすごい病んだエロしか書けなくて…。
眩暈ではとかく甘くとかく切ないエロを書こうと決めていたので、話としては満足^^;
眩暈はまだまだ終わりません。
数は折り返しというだけで、ようやく出揃った感じなだけで^^;
わーどで20ページ近くエロ書いたのなんて初めてだ!(笑
栄口はやっぱり水谷には酷いことさせれなかったっていうお話でした(ぇええ
なぜだろう、うちの球児達は誰一人として今の相手が初ではない
それもそれなりの場数を踏んだ者達ばかりだ…;