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そうして見上げたこの空は、ただどんよりと暗く曇っていた。 どんな音色も響かない、静かに、冷たく。 開きもしなければ、届きもしない。 冬が、来たから。 眩暈もただのガラクタであれば 14 ― Reloaded the edge ― That night, one day you may get lost, please remember me smiling. そんな単純なこと、と君は笑みながら言うだろう。 だけど澱み切った冷たい泉には、たった小さな情念でさえ、酷く心を痛める牙になる。 思い出すだけ、鏡の向こうには何もない。 思い出せば出すほどに、胸を占める失った痛みは、補完されることなく続いていくから。 表面上落ち着かせていたようには見えたけど、きっとその内心は、切なさに枯れる花のように、荒んでしまっていたんだろう。 答えてはくれない、だってここにはもう、愛した人がいないから。 守るべきものを失った小さな牙は折れてしまった。 水谷は、オレの問いかけには何も答えなかった。 どうなったんだとか、どうなるんだとか。 助けられるのか、そんな問いは全部無視して、もう、いないよ、と言った。 それがどういう意味なのか、浅はかなオレには分からなかったけど。 泣きそうな顔で笑う水谷を見て、栄口がどうなってしまうのか、予想も出来ない痛みに胸が痛んだ。 どうして、そんな声が上がる中でオレは小さく、言った意味のままだよ、と言う。 それ以外の言葉は思いつかない、必要ない。 言葉を繰る意味はもうない、隠すべき何かは、形からなくなってしまったから。 足掻いても足掻いても、そこにはもう何もない。 形どころか影すらも奪われて、残されたのは微かな痛みと行き場のない気持ち。 そんなものはもう、意味がない。 向けるべき人は、永遠に失われてしまう。 そうと告げた時、みんなは息を飲んで沈黙した。 言葉は見つからない、ただでさえ、分からない現状に振り回されていたのに。 段々と寒さが形を成し、雪すらも形を現す、12月。 オレは、栄口を失った。 止めることすら出来ず、栄口の声に、涙に、何も言えずに。 行き場を失った大きな思いだけが、消化されずにわだかまっている。 学校の方には、退学という話も来ているらしい。 巣山が聞いてきたところ、ほぼ確定のようで、西浦の地から栄口は消えてしまう。 担任の方はなぜこうなっているのかまったく把握できていない様子だった。 それは、当然だと思う、誰も知らなかったのだから。 人の前では、誰よりも綺麗に笑う子だったから、上手に、だけど、切なく。 どうすれば笑顔に見えるか、疑われない笑顔に見えるか。 そんなことを知っている、悲しい笑顔だった。 いつも困ったように笑うから。 いつかは、無邪気な笑顔を見れると思っていた。 そんな願いは初めから叶わないものだったはず、だったけど。 だけど期待してしまうほど、栄口は、優しくなっていたから。 打ち砕かれて、だけど悩む暇なんてない。 決断する時間もなく、栄口はただ、いなくなってしまっただけ。 止める意思も全て抜いて、そこにあったのはただの現実。 「もう、いないよ。」 再度口にする。 誰ともなく飛び出してくる、なんで、どうして、という言葉を全部無視して。 問いかけの答えに意味はない。 どんな答えも道にはならない、道を通すための土台すらないんだから。 「―――なんでだよ。」 「おい、田島、やめろ…っ。」 「阿部は黙ってろ!!なんでだよ!!ちゃんと説明しろよ!!」 「田島っ…。」 「お前の口からもういないなんて聞きたくない!!」 田島のキツイ目がいつも以上に吊り上がって、凄みを利かせた声が響く。 殴りかかってきそうな勢いで睨まれても、オレには何も言えなかった。 オレだって出来ることなら言いたくなんてなかったさ。 そんなことない、もう一度会える。 言えたら、それが本当なら、オレはこんなに沈んでいない。 そう口にすることで、本当に失ってしまうことになるんだから。 音にした瞬間、認めたくなくても、意思は関係しない。 ただ、意味を音にしたときに、頭はそうだと理解する。 否定的な感情も全部閉じ込めて、音だけが真実かのように。 田島の怒号を阿部達が納めて、部室にはまた静寂が戻る。 他の言葉なんて思いつかない。 他にどうしろって言うんだ? どうしていたら、栄口を救えた? 自問自答は届かない、何もないんだから。 これ以上の会話に意味はない。 オレが伝えたいことは伝えた、他に伝えることもない。 全員の視線が集まるのも無視して立ち上げがると、足早に部室を抜ける。 ここにいても何も変わらない、だけど、何故か辛い。 みんなの顔を見ていても、何も変わらないことは分かっているのに。 泣いてしまいそうで嫌だった、それだけで、逃げてしまう。 水谷は馬鹿だね、なんて。 幻聴が聞こえた―――。 * 風の抜ける音がひたすら抜けていく。 淀んだ空は雲間から光を覗かせることもなく、ただどんよりと。 屋上は静か。 恐ろしく静まり返った空の下に座り込んで、俯く。 こうしていたって何も変わらない、ただ変わりようは、ない。 あの時、どうして栄口の体を離してしまったんだろう。 ずっとずっと、抱きしめていたら、奪い返せていたら。 粉雪に混じって涙を零す栄口は、最後はただ、涙があふれないように、笑った。 オレを巻きこまないために、守るための決断に。 思い出だけはぐるぐると回る、気持ちだけは募っていく。 歩いていける自信なんてどこにもない、この手のどこにも栄口を感じないのに。 時計の針を返しても、時間は決して戻らない。 冷たい風にあおられて、凍った時は動かない。 そうして無気力に手足を伸ばしても、折りたたんでみても。 結局は何も出来ないまま、グシャグシャになった音だけ、まとまりなく無機質に流れていく。 もう一度会えたら。 色褪せない記憶だけが、痛む胸を加速させて。 目を閉じても、遠すぎて届かない。 これからもずっと思い続けるだろう、何一つ届くことはなくても。 言葉でも笑顔でも、栄口には届かない。 夢見た明日も、一緒にいた過去も、全部いずれ、消えてしまう。 じくじくと痛む胸を押さえて、また熱くなる目頭を擦った。 フェンスの向こうには空が見える。 雲だけが張りつめた、冷たい風の中で。 きぃ、と背後で鉄の擦れる音、振りかえれば、阿部が顔を覗かせた。 いつものように何を考えているのかわからない、無表情にほんの少しの怒りを加えて。 後ろでに扉を閉めれば、真っ直ぐにオレの方へと向かってくる。 「―――怒りに来た?」 「…いや、お前なんか怒っても仕方ねぇよ。」 「田島は怒ったよ?」 「行き場がなかったんだよ、ホントなら栄口に怒りたかったんだろ。」 「…はは、そうなのかな…。」 眉すらぴくりとも動かさず、淡々と告げる。 オレの不甲斐なさに怒ったってなんら不思議はない、栄口を止められなかったんだから。 それ以上の言葉も紡げずに黙っていると、阿部は隣まで来て背をフェンスに預ける。 ほんの数秒ののち、視線すらこちらに向けず阿部は小さく呟くように言う。 「―――昨日帰った後なのか、それは。」 「…そう、家ついてすぐに連絡来て、学校で会えないかって。」 「んで、会って?」 そこまで聞くのか、露骨に言葉に詰まるオレに、阿部は首をくるりと回して睨んできた。 何を話したのか、そこにどんな経緯があったのか。 全部包み隠さずに話せ、そんな目で、じっと睨んでいる。 今までのこと、阿部にはほとんど話していない。 阿部がその気になれば、本気で向き合ってくれたことは明白。 だけど話さなかったのは、―――馬鹿なオレの小さな嫉妬心。 二人は同じ中学で、オレよりもずっと仲がよくて、そんなことばかり気にした。 オレが変なことにさえ、こだわらずに阿部を頼っていたら結果は少しでも違うものになっていたかもしれない。 全てはもう、遅いことだけど。 阿部に話すって知ったら、栄口はなんて思うだろう。 きっと困ったように小さく笑って、もう、水谷は…っていうだけ。 そんな言葉すら、聞こえることはない。 一つ息を吸って、口を開いた。 以前まで話していたことの、先。 栄口のこと、思いつくままに全部。 お家のこと、経緯、どうしてそんなことになったのか。 何を考えていたか、止められなかったこと、―――最後の言葉。 阿部はオレよりずっと賢くて、どんな問題でも解決してしまいそうな、そんな期待もこもってるのかもしれない。 だけど、阿部は決して万能じゃない、本人にその自覚があるし、万能な人間なんていやしない。 だけど、重たいものを抱え続けているよりは、胸の圧迫感は薄れる。 空洞を押しつけるような痛みは、詰まりさえ取り除ければ、少しずつ抜けるもの。 それを期待して、語尾が荒くなろうと、小さくなろうと、関係なく話し続けた。 一人で抱えていたこと、栄口と二人で抱えていたもの、少しだけ話したこと。 順序立てすら曖昧な言葉の羅列に、阿部は何にも言わず、聞いてくれていた。 時折目を伏せたり、腕を組みかえたり、そんな動作の他には何もない。 一見して真面目に話を聞いているのか計り辛いところもあるが、それが阿部なんだとわかっている。 こう見えて阿部は、―――栄口のことが結構好きだ。 それが気にくわなくて、話すことが出来なかったんだけど。 もちろん阿部の好きの意味くらいわかっている、だけど意地を張ったのはオレの責任。 子供じみた感情にばかり振り回されて、本当に必要なことが出来なかったから。 歯がゆさに語気が荒くなっても、阿部は何も言わない。 きっとオレの小さな嫉妬心すら、伝わってしまっているはずだから。 最後の言葉の、オレの推測を付け加えて口を閉じる。 不甲斐なさに軽くフェンスを叩いて締めくくれば、黙っていた阿部が首を曲げる。 視線が頬を付くひり、とした感触に自分はそっちを向くことも出来ず、流れていく風の音だけを聞いていた。 阿部が何を言おうと、そう、結果的にはもう遅い。 オレが話すのも、阿部が聞くのも、遅すぎた。 解決の手立ては思いつかないし、阿部が何かしら思いついたとしても、栄口にまで届かない。 オレが馬鹿だったから、謝罪の言葉すら、風が弾いていく。 少しのためらいの後、決断したオレは阿部の言葉を求めて視線に応じる。 ようやくぶつかった視線の先で、阿部は一つの盛大な溜息のあと、ゆっくりと口を開く。 「…そういうことはマジで早く言っとけよな…。」 「うん、オレもそうだと思ってんの、だけど言えなかった。」 「早く言ってくれてりゃ、多少なりとオレだって協力出来てた。」 「…。」 「うちの母親なんか、栄口の家のこと、オレよか詳しかったし。」 どうして?と見返せば、子同士よりも当人外のほうが接触の割合が高いんだと、との返答。 意味合いは分かる、二人はシニアだったから、親同士で交流があったと思えばまったく違和感はない。 栄口を見ていればわかるとおり、あんな風に誤魔化して、普通を装うことがすごくすごく上手だから。 誰の目で見ても不審ではない、だけどオレは分かった。 本当の意味で、栄口のことを知りたかったから。 自分で探した、嘘なんてつかないですむ場所でいたかったから。 「―――まぁでも、お前がオレに話したくないって理由はわかる。」 「…え、それマジで言ってんの…?」 「誰だってそうじゃねぇの?逆に人間らしくていいと思うけどな。」 「…人間らしく、ねえ。」 「好きなら嫉妬もすんだろ、協力対象に見えてこねぇっていうのは分かるよ。」 「阿部からそんなこと聞くことになるとは思わなかったよ。」 薄くだけど、笑えた気がした。 そこまで配慮してくれたんだろうか、阿部の考えてることは難しすぎて、いつ聞いても真実がわからないんだけど。 嫉妬は人間らしい、か、阿部が言うと説得力があるような気がして。 その通りだ、2、3度頷けば、冗談で言ってんじゃねぇぞ、と返ってくる。 わかってる、そんなこと。 人一倍真面目な根をしてるやつ、阿部の誠実さくらい、しっかり理解してるつもり。 「オレは栄口のこと、好きは好きだけどな。」 「…あぁ、うん。」 「お前が思ってるようなもんじゃねぇよ、―――わかんねぇだろうけど。」 「優秀なセカンドとして?」 「…ま、今はそうだな…とにかく。」 含んだような台詞に首を曲げつつも追求は許されていないので、阿部の次の言葉を待つ。 つい今し方までの冗談めいた目元は真剣なものに変わっていて、話が変わったことを理解した。 「栄口は、一緒にいたいだの、お前がいなくなるのはイヤだの、そう言ったんだろ?」 「うん…だけど…。」 「その時止めれなかったのはもういい、そんな状況でお前一人会話したくらいじゃ、栄口は動かないだろ。」 「…。」 止めれる自信があっただけに、その言葉が重い。 その自信ですら、オレの思い上がりに過ぎないから、こんなに後悔に溢れているんだけど。 オレが俯いたのに対し阿部は何も言わず、言葉を続けた。 「もう終わりだなんて確証は何処にあんだよ。」 「え…。」 「栄口が自分を捨てて母親に代わるっていうんだろ?そのタイミングまでわかんのか、お前に。」 「…え…いや…それは…。」 「お前の話聞いた限りじゃ、例えどう話をつけても、前科がある以上栄口の父さんはお前と話をさせるために外に出したりしねぇだろ。」 「…どういうこと…?」 「意味だよ、母親になるっていうな。」 「………。」 「全員がいないと、たぶん意味を成さねぇんだ。」 「…?」 「とにかく、まぁ推測の域は出ねぇけど、昨日の時点で、父親はたぶん家にいない。」 栄口の父親だ、栄口自身が口で負かして出て来れる相手だとは思えない。 阿部はそう続けて、今家に父親がいることを完全に否定してみせた。 なんて簡単な辻褄、だけどオレにはまったく思いつかなかったことで、阿部とは頭の回路がまったく違うんだろうな、ということを改めて思い知った。 続けて、阿部は栄口の父親が頻繁に家を空けることを告げる、出張が多い時は長くあけることもあるとか。 母親からだけどな、と言う阿部の姿は、今のオレにとっては頼もしすぎる。 「んで、問題はその母親を宣言するタイミングだ。」 「タイミング、って…。」 「どう考えたって栄口は栄口だ、どんな方法で成り替わろうかなんて分かんねぇ。」 「そりゃ…。」 そこではたと気がついたが、オレは完全にその意味合いを考えていなかった。 どうしたって外見や心持は栄口に変わりない、それがどうやったら母親になれるのか。 ―――体を傷つけていくうちに、母が下りてくるような気がした。 そんな言葉で何故か、母になるイコールで魔術めいたものでもするものだと決めつけていたらしい。 「それもあながち間違いじゃねぇだろうな、おかしくなってりゃそういうのもあり得る。」 「じゃあ…!」 「だけど体が死んで動くか?仮にもそんなこと出来るとは思わねぇ。」 「…うん…。」 「その上、だ。この上栄口が死んでみろ、あの家は完全に狂うだろ。栄口は分かってるよ。」 「…ということは?」 「現時点で栄口は自分の心が壊れてるとでも言ってんだろ?」 阿部の問いかけに黙ってうなずけば、顎に手を開けて、数瞬の思考時間をはさんで、再び口を開いた。 「家族から、栄口勇人っていう存在を完全に失くすことだろうな。目的は。」 死にたいと言っていた、オレに殺してほしいとも言っていた。 だけどオレと生きたいと言ってくれた。 それは嘘ではなかったけれど、出来ないことを悟った。 自分が消えてしまえば、矛先は―――オレに向く。 それをするくらいなら、生きながらに完全に存在を失ってしまう方が楽だっていうんだろうか。 もともと、栄口自身に与えられた役目は母親、今までは、オレに殺されるという目的があったから、かろうじて自分の部分が残っていた。 家族から、その言葉自体を失わせる―――。 オレの目が迷ったことなんか阿部にはお見通しのようで、十中八九、お前のためだろ、と言う。 優しい人、そのせいで、苦しませてしまった。 だから、と阿部は付け加える。 「そうならたぶん、まだ間に合う。」 「…え…?」 「出先の父親が帰ってこねぇと、無理だろ?」 「…あ…。」 後から認識させては、意味がない。 その上、一番重要なポイントだ。 姉と弟を説き伏せても、父親がダメなら意味がなくなる。 そんなことすら思いつかなかったオレは、どうして本当にこんなに、馬鹿なんだろう。 まだ間に合う。 言葉がぐるぐるとまわり、胸の痛みが加速する。 「昨日今日ですぐなるとは思えねぇ、出張だと2、3日は開けるって聞いてる。」 「なら、間にあう…絶対…?」 「―――これも仮定に過ぎない。だけど間に合う可能性も捨てきれないだろ。」 空洞に、満ちる。 行き場を失っていた志が、急に光を取り戻したかのように。 「お前は遊ばれ過ぎなんだ、現実見て答え考えろよ。」 「う、うん、ごめん…。」 「栄口の言葉に遊ばれんじゃねぇぞ、いらねぇ壁はブチ抜いてやる。いいか?」 「阿部…。」 「そうそう、諦めるのはまだまだ早いわよ?」 「か、監督!?どうしてここに…!!」 ばたん、大きな音がして、肩で息をするモモカンが屋上に飛び込んでくる。 その傍らには篠岡がいて、同じように肩で息をしながら、携帯を持って立っていた。 状況の分からないオレと阿部はぽかんと二人を見つめて、言葉を待つ。 二人はしばらく深呼吸をしたあとで、ようやく口を開いた。 「ようやく栄口くんの家に電話、つながったわ…!」 「そ、それで!?」 「部活も退部で、だそうよ…!」 「…っ…!」 「だから自分で書類書いてもらわないと、野球部は厳しいんです、って言ってやったわ!」 * 栄口本人は来れない。 監督は仕方ないと言ったらしいが、代わりにお姉さんが来てくれるらしい。 本人でないとダメと伝えたのだが、急ぎであること、栄口の体調がすぐれないことを理由に取り決められてしまったらしい。 そうなると、本人には会えないが、お姉さんを説得することも出来る。 だってここには、一人じゃない。 野球部のみんながいる。 阿部と廊下を駆けて部室に戻ると、さっきまでの面々がしっかり揃っていた。 どうも監督の話を受けてオレ達の帰りを待っていてくれたらしい。 田島の視線が飛んできたから、オレは笑ってみせた。 迷うことはない。 迷う必要はどこにあったのか。 そんなもの、今持っていたって仕方ない。 細くても小さくても、確実な道が一本、見えてきたから。 「すぐ来るって、さ。」 「うん、さっき聞いた、ごめんな、勝手に飛び出しちゃって…!」 「いや、いいよ。もう振っ切ったんだろ?」 「―――うん、もう間違えない、頑張るよ。」 「おう、オレらここで見てっから。」 ―――コンコン。 は、として、全員意識が扉に向く。 部員ならわざわざノックはしない、学校の人間でも、おおよそはノックなしに開けてしまう。 早速か、そう思って、不自然に身構えそうになるところを深呼吸で落ち着ける。 大丈夫、負けない。 揺るがないのは、栄口を助けたいという気持ちだけ。 失礼します、通る声が続く。 Reload the edge. 帰ってきた水谷は、かつて栄口を守ると決めたあの笑顔を携えていた。 扉の向こうの自分の敵を、お前はきちんと、終わらせられる? そんな問いに、どうやら意味はないようで。 水谷は笑う。 栄口の求めた、絶対的な白さで。 取り戻したのは、最強の矛。 NEXT 基本的に水谷はうじうじしないのが憂氷宅流なんだと思う。 ホントのところ欲求に従うとバトらせたいところ。 バ ド ミ ン ト ン じ ゃ な い 。 終わり近いのでペース上げたいところ。 田島が異様に詩人すぎてなんか頭が痛くなってきた。 |