|
必要の言葉を手繰る時、君はどれだけ愛を込めたのか。 望みの言葉と辿る時、君はどれだけ悲しんだのか。 本来、考える込むほどの問題ではない、そんな年ではない。 しかし君は知ってしまった、ほんの一瞬の言葉で不安を孕んでいく。 探究者や専門家なんて、君の前ではただの人。 欠如を補おう、そんなものに、望みを感じる君は。 いても、なんて言わないで。 君の言葉の重さは、風が吹いても笑えない、達観の末に見つけた澱み。 君は愛しきエンターテイナー ぽつりと溜まった涙の重さを、オレは忘れない。 背をさする手のひらの温かさも、忘れない。 本当に偽善を語る君の手は、何処までも嘘つきでひょうきんで。 嘘つきな、エンターテイナー。 笑っていてほしいだなんて、単純な望み。 優しい顔は疑わない、甘い笑顔は自己犠牲。 気付かないでいれば、君は一人の子供でいられたのに。 記憶に残る衝撃、忘れることすら出来ない大きな悲しみ。 何処までも自分本位な笑顔に、君自身が流されていくことに。 きっと誰も、わかってはくれない。 軽々しい口から紡がれる、鉛のような言葉、淀んだ口ぶりに、息が詰まって。 安易な言葉を、疑わないでいられない時だってあった。 適当、とも言える応対に、苛立たないことも、ないことはない。 それでも君の優しい笑顔は、冷えたオレの籠を、開いてくれたのに。 必要とは何か、望まれるとは何か。 そんなこと、本当は考えなくていいんだよ、って。 言えないでいた自分を、今となっては絞め殺したいほど恨んでいる。 その笑顔を、忘れることが出来るのか。 輝かしい別の記憶に、流されてしまうというのか。 誰の心にも残らない、切なく語る、エンターテイナー。 ただの娯楽提供者をくくり、必衰を語る君の笑顔の切なさを。 どうしてオレが、忘れられるのか。 人の心に残らない、その切なさを、どうして君が知らないといけなかったのか。 輝かしい温もりを奪うい取る冷たい大海に、どうして自ら飛び込もうとする。 君が絶望した夜に、どうしてオレはいてあげられなかったんだろう。 恐ろしさを感じて、どうしようもなくなった君に、 オレは忘れない、その一言を、どうして届けて上げる権利がなかったのか。 悔しくて仕方ない。 君に生きる意思を感じないのは、それが大きいところなの? 問いかけは無常、君は無言。 空っぽだから、そうとだけ告げる君。 だから笑顔で補完して、どうにかしてい続けようとするんだね。 君にとって傲慢は自分の象徴。 優しさは、心の奥の音。 混じらせて織り成して、だから君は一枚絵。 傲慢を演じるのは、疲れるのに。 優しさを常にするには、自分を削ると同義なはずなのに。 記憶にいたい。 境界線を壊しても、君は必要とされるためならば、永遠にそれを演じるんだろう。 君は、 どれだけ踊り狂っても、世界が変わらないことを知っているから。 傲慢を演じ続けた結果、本来の自分を、誰も覚えていないとはどういうことか。 時折見せる優しさにすがり、本来持つべき傲慢を、本性を偽って。 違うよ、違うよ、水谷。 境界を忘れて迷ってしまった羊飼い。 真実を忘れているのは、境界に囚われた羊飼い。 なのに君は、崩壊を選んで。 本当の自分を、忘れてしまうんだ。 悩みを忘れて踊り狂う、それはまさしくエンターテイナー。 踊り疲れて、深い森で一人、死んでいくんだろう。 幸せや充足をそれと信じられずに、自分で自分に糸をかけて。 簡単なことなのに。 教えてくれる人を、知らないだけ。 声の発し方を、知らないだけ。 「話したところで、栄口に何が出来るの。」 君はそれを、踏み入らせないための境界に使うから。 オレはただ切なくて、あまりにも切なくて、とめどなく零れるものを、止めることすら出来なかったけど。 本当は、知っている。 エンターテイナー、君を灰などにさせはしない。 * 狡猾なまでに晴れた空の下で、オレは空に向かって声を張り上げる。 肺にかかる圧迫感も無視して、伝わるまで叫んだ。 「オレは水谷が好きだよ!!」 無言の君は、ただ目を丸くして、見下ろすように首をかしげているけど。 目の前にいながら、無反応だから。 いつまでもいつまでも叫ぶ。 手のひらの温かさは、君の心。 抜けるような瞳の色は、嘘付きな自分を隠すための、檻。 君の笑顔を、脆弱と言うなら、精一杯の強がり。 全てを愚かと称するなら、傷ついた君の心は、これからも大海に迷うだろう。 だけどそれは、オレが引き揚げてみせるから、 笑顔を必要と言うのなら、オレが何度も笑うから。 「栄口…?」 「オレは、ちゃんと知ってる。」 「なにを、―――。」 「水谷は、優しさを偽善と呼ばれたんだろ―――?」 変わる顔色に、オレはすべてを理解した。 本当に本当に優しいだけだったのに。 その優しさを演技という、嘘という。 裏がある、どこまでも綺麗な人間なんて、この世にはいないと、言われたんだろう。 なんて酷い様。 どんどん冷たくなっていく手を握りしめて、誰に言われたのか、そんなことばかり、考えた。 今思っても仕方のないことだとは思う、言葉の重さは、迫害の歴史を説に語っていたから。 だから嘘というんだね。 演じているんだと、思ってしまったから。 だから自分を、嫌いだというんだね。 本当に優しいだけなのに、否定されてしまったから。 誇るべき優しさを全否定された君は、優しさで構成されていた君は。 空白になってしまった。 だから代替品を探して、補完できるものを探して。 酷い痛みを知ってしまったから、折々で笑顔を変えて逃げないと、辛くてやってられなかったんだ。 空白になった君は、存在の意義を求めた。 本当は世界を信じていたから、優しさ溢れる世界を、信じていたから。 重く重くのしかかる現実に、幼い君の心は、捻じ切られてしまった。 ただ思ったことを口にし、行動したことを君は、 ―――笑いの道具だと、言われたんだね。 「―――っ違う…!!どうしてオレが嘘ついてるって、言わないんだよ!!」 「…水谷…?」 「優しいことばっかり言って、そんなこと思ってないくせにって!!」 「…。」 「どうせそれも冗談だろ、って、なんで言わないんだよ…!!」 「………。」 「冗談だろ、って…言わないんだよ…!」 あぁ。 だから本心でいることを、怖がってしまうんだ。 冗談、嘘、そんな言葉で追い詰められて。 泣きだしそうな水谷の頬に触れる、冷たい頬、いつしか濡れていた。 だけどその奥にある陽光を、どうして水谷の周りの人は、信じてあげられなかったんだろう。 なぜこの暖かさを、踏みにじるようなことをしたんだろう。 切なさに耐えられず、腕を伸ばして頭を抱え込む。 髪を伝う熱、冷たさの奥から、悲痛な声が聞こえる気がして。 「オレは水谷がどんなことしてたって、忘れたりしないから。」 優しさを奪われた空白は、人の記憶にも連鎖していく。 痛い軋む姿を、忘れていく。 だけど。 痛みに泣いて、軋みに叫んだ水谷のことを。 オレは忘れない。 生にすら希望を持てない、そんな言葉、辛くて言うのも精一杯だって知ってる。 ひょうきんとさえ言える笑顔の下で、軋む体を知っている。 身を削る姿を、絶対に忘れない。 どれだけ冷徹に笑ってみせていても、その下でどこまでも必死になっている姿を。 その姿が、この世界の何よりも綺麗だったことを。 惨めにも一人で泣き続け、それでも立ち止まらないでいたじゃないか。 逃げ出したいと思う時、壊れるところまで行っても水谷は、 逃げないで、泣いていても立ち上がったんだろう。 そんな人を、忘れない、忘れたりするはずはない。 ぽつりぽつりと伝う雫が、オレのそれと合さっていく。 絡み合った手は、温度を分け合う。 交互に重なる指の祈りがどこに届くか、そんなこと、どうでもよかった。 白い灰に変わる直前のエンターテイナーは、虹色に笑って、涙をぬぐった。 笑って、エンターテイナー。 君の笑顔を、誰も奪ったりしないから。 笑った顔を、誰も忘れたりしないから。 君は愛しきエンターテイナー―――がむしゃらに生きる姿は、何よりも美しい。 ちゃんと続き書きたいなーと思ってました、そしてここから水谷最強伝説が始まりを告げます(ぁ 前回突発で書いた割に、これは病み部屋のオール繋がってますシステムに組み込んでもいいなーと思うようなネタだったので、続かせてみた。 眩暈終了直後くらいが希望、眩暈が始まる前だと、「グランウンド上で踊る君を見て」がなくなっちゃいますよ、ね(ぁあ こんな病んでない栄口は眩暈前ではありえないし、水谷も…ごにょごにょ。 水谷は心底白だなぁ。 |