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2. 背中に隠れて その後、顔の熱が引かなかったことなんて、今後一切口にはしない。 読み違えたのは何だったのか、少し判断できないけれど。 大きく見れば失敗ではない。 あの空気を楽しめなかったのかと言われれば、嘘。 酷く楽しかった。 緊張の局面でバッターボックスに入った時のような、そんな。 「末期ってーのかなァ、よく分かんねーけど。」 初めはもちろん、ただからかっているだけだった。 暇だったし、熱中する花井の邪魔をするのも割と楽しい。 それがだんだん、普通の邪魔じゃ反応が返らなくなってしまったから。 だから出来心で、少し煽ってみた。 そしたら思いのほか面白い反応が返ってきて、止まらなくなった。 何も考えてなかったわけではない。 ただ、少しだけ読み間違えた。 花井が男なのは嫌というほど知っているけれど、予想以上に食いつかれてしまって。 経験豊富、とは言わないが。 チームメイトに冗談という名目で押し倒されたりするのには慣れていた。 たとえその相手の目が滾るようにぎらついていても、それをあしらうくらいは。 だから、というのが根拠にはならないとしても、本当になんとなく。 だから少し、ホントに一瞬、気を抜いてしまったというか。 ホントに押し倒されるなんて思わなかった、というか。 押し倒されても、絶対に逃げ出せる自信があったというか。 実際、逃げ出しはしたが。 どうも甘い。 自分の行動が。 あの目を見て、一瞬でも動けなくなった自分が。 そもそもちゃんと考えられていれば、押し倒されるなんてヘマはしなかったはずだ。 いくら花井のほうが体格がいいなんて言っても、すばしっこさなら到底負けない。 「…調子悪ぃのかな、これも分かんねぇや。」 調子が悪い自覚はどこにもない。 馬鹿はそういうこと気付かないとは言われるが、これは違う気がする。 なんとなく、だけど。 そういえば直前で逃げ出して、花井の男としてのプライドは大丈夫だろうか? なんて考えるだけでも結構おかしいとは思うのだけれど。 チームメイトとしては、頼れるキャプテン。 4番争いが出来るライバル。 勉強も出来る、女の騒ぎ方からして顔もいい。 体の大きさは羨ましい。 ホームランなんて、今の小さい身長じゃ絶望的。 バット構えてる時の真剣な顔は確かにカッコイイ。 緊張したり焦り出したりすると歪む顔は面白い。 好きか嫌いかなら好き。 単純な話だ。 でも、その背に隠れてしまうのは自分のプライドが許せない。 意地悪なことも言ってしまったが、覆いかぶさるようなことをする花井が悪い。 競い合うのは楽しい、互いに削り合っている時がすごく。 でも、身長は憎たらしい。 今でさえ、その背に隠れてしまうのに。 口をついた言葉は、嘘ではなかったけれど。 だからといって、こんなことでも負けてしまうのは癪だった。 もう少し遊ぶし、つき合わせてやるつもりで。 いいようにされるより、いいようにするほうが楽しい。 「…相当キテるよなァ。」 「田島ァ、さっきから何ボソボソ呟いてンだよ、気持ち悪ぃ。」 「うっせー!」 今は笑うしかない。 考え込むなんてらしくないことは重々承知。 ―――どうして花井のためにこんなにも考えなくてはいけないのやら。 「田島が野球以外で物考えてるってだけで、雨降りそうだよな。」 「シツレーな!オレだってちゃんと物考えるぞ、ゲンミツに!」 「嘘つけよな、普段頭パーのくせに。」 「う、そんなことねぇよ、考えるときは考えて…。」 それを人は二面性と呼んだりするのだろうか、難しい言葉は分からない。 無意識に浮かぶ笑みは考えて出しているわけではないのだけど。 その馬鹿な素振りだって。 能ある鷹は爪を隠す、だっけ。 胸中で呟く。 遠目にちらつく、20センチ強。 4番に据えれば一人で点を取りに行ける、超難関。 181に対しあまりにも弱小なスタートではあるけれど、最終的に追いつければいいのだ。 せめて目線を合わせられるぐらいになればいい。 だから今は。 もう少し、その背に隠れてやってもいい。 今に見ていろ。 口端を歪める。 NEXT 後書 田島は絶対黒受けなんですよ私、超男前、無意識計算。天然黒誘い受け、素敵な分野だ。 でも田島様はいざ本番になると唐突に性格が変わると思う。 というわけで2つ目は田島視点。昨日までの腹黒さの解説的なものにしたかっ…た(撃沈 慣れてないくせに腹黒に手を出すから! きっとニコ動で見た「田島様が倒せない」の影響かと思われます(ぁ ? |