「お前先に食えばいいだろ!」

「やだよ!オレになすりつけんなら花井が食えばいいだろー!」






先手の







目の前に置かれているそれは、篠岡お手製のゲテモノおにぎり。
中身は聞いていないが、何故か甘く、しかし辛い匂いがもんもんと駄々漏れになっている。
甘いものと辛いものとが混同して、凄まじい匂いになっているというか。
そして白いご飯粒の間から何故か沸きだす、黒い液状のもの。
どうしてこんなことになっているか、それはただたんにオレと花井のじゃんけん運がなかったこと。
篠岡が何でこんなもの作ったかっていうと、モモカンと何やら相談してたみたいで、オレにはわかんない。
あああ何で負けちゃったんだろう、よりにもよって。

花井もいっしょ、いや別に!嬉しいとかそんなんじゃないんだよ!
どっちかっていうとなすりつけて逃げたいくらいだし。
オレが花井のこと考えてるわけがないし、ぶっちゃけどうでもいいし!

篠岡に満面の笑みでおにぎりを渡されて、ひきつった笑顔で受け取る。
凄まじく歪んだ笑顔だった自覚はあるんだけど、篠岡はまったく気にしていないみたいで。



「はい、ちゃんと食べてね?」

「あ、う、うん、あり、がと、しのーか…。」

「こっちは花井くんね?ちゃんと栄養は考えてあるからね。」



にーっこり笑ってそんなこと言われても、オレは正直どうしたらいいのかまったくわかりません。
食べないといけないの?これ、絶対食べないといけないの?
花井もおにぎり受け取って、完全に固まっちゃってる。
うん、気持ちはわかるよ、正直これは無理だと思う。
においがえぐいし、見えてる部分ですら危険な感じで。



「…お前、さき、食ってみろよ…。」

「やだよ…花井が先に味見してみてよ…。」

「んだよ!お前が先に食えばいいだろ!」

「花井が先に食えばいいじゃんか!!」



ひどい!花井ってばオレに味見させて最悪食べないつもりだな!
…なんて、そんなつもりないの知っててそんなこと考えてるから、馬鹿って言われんだよね。
そんなことわかってる、ただそんな感覚を麻痺させるくらいの―――刺激物が目の前にあるせいで。
やれ食べろ、それ食べろ、と囃すみんなの声がいっそ鬱陶しいくらいに感じてしまう。
恐る恐る口元に持っていっても、その酷い匂いに胃液が逆流してきそう。
花井はこの甘い匂いだけでもアウトなんだろうな…と思うと、何だか頑張らないといけないような気がしてきて。

一口、せめて一口だけでいけるようにしよう。
勢いをつけて、口の中に押し込む。

おにぎりの絶妙な塩加減の奥に、ほんのり甘い…これはカスタードに…う、キムチ…!?



「うぇえっ、まずぅっ!!」

「わ!馬鹿お前、食ったのか!?」

「は、花井が食えって言ったんじゃん…!」



さすがの味に転げまわりそうでした。
はっきり言って、まずい…。
こんなもの、二度と食べたくないよ…。
でも、花井の手の上にはまだおにぎりが乗っている。
みんなはオレが転がりまわるのを見て満足したらしくて、さっさと練習に戻っていく。



「花井、それちょうだい。」

「はぁ!?お前、今自分の食ったろ!?」

「これ、超甘いよ、花井甘いの嫌いでしょ?」

「…まぁ…。」




「オレが食べたげるから、終わったらちゅーしてね。」






奪い取ったおにぎりを無理やり押し込んで、噛んだら負けだと言い聞かせながら喉に追いやる。
残ったものをなんとか飲み干そうとして、いきなり、

合わさった唇が無理やり残った具を奪ってく。






「…ば、馬鹿!なんで花井が食べちゃうんだよ!」





「…お前ばっか食わせてるわけにはいかねーだろ、…見てんのつれーし。」










先手の―――先約は、早いもの勝ちでお願いします。












うぎゃあああああ二度と書かないって誓ったのに結局書いてるじゃん私!!
なんでって…花水の日だったから…;;
なんでだろう、泉攻め月間よりもずっと筆が進む/(^q^)\