それがどれだけ距離を開けようとも。
例えばどれだけ姿を隠しても。
キミに似合わず静かでも、そのとおり、小さくなっていても。

必ず見つけだす、必ず会いに行く。










一番君に










「いずみ、いずみ!こんなとこ公園会ったんだなー!」




日が傾き始める午後は4時半、珍しく部活を早めに切り上げることになったオレ達は、少し寄り道をしながら自宅に向けて歩いていた。
田島の家は学校からチャリ一分、今こうしているのは特に意味のない行為だとわかっていも帰るに帰れない。
夕日がオレンジに変わるころ、鼻歌交じりに機嫌のいい田島と、帰るふり。
家に帰るつもりなんて毛頭ないのに、どちらからも帰ろうと言い出さない。
道草は得意と言えば得意だけど、今はそんな意味じゃないと思っている。
繋いでいた手を唐突に話して、田島は駆けていった。
この公園はオレも初めてだ、こんなところにあったことすら知らなかった。
遊具の錆び具合からして、相当昔にはあったもののはずなのに、気付かなかったのか。

遊具の周りをちょこちょこ走り回っている田島は楽しそうだ。
オレはと言えば、言い知れない杞憂にさっきから溜息をついてばかりで。
早く帰ったほうがいいんだろうか?
遊んでいる暇があるなら、家に帰って自主トレとか…。





「いずみー!!」

「んだよ、お前…遊んでる暇なんか…。」










「かくれんぼしようぜ!!」









「…はぁ?」


「ほら、鬼決めじゃんけん!じゃんけーん…!」







ぽい。







「泉鬼ね!ちゃんと10秒数えろよ!!」



「あ、ちょ!田島!!」





オレはぐー。
田島はぱー。
他愛ない遊びとはいえ、こんなときの運さえ田島は味方にしてしまうのか、せこい。
そんなことを考えてるうちに、田島は一目散に駆けて行く。
遠く遠く伸びていく影、オレが鬼。
仕方なく背を向けて、オレは10秒のカウントを始める。

―――現実、かくれんぼのようなものならオレはこんなに溜息なんてついたりしない。

遠くに離れてしまったらどうしたらいいのか、オレにはわからないんだ。
田島の口からいつどんな言葉が飛び出してくるのか、想像も出来ない。

意外と物事を考えながらでもカウントは出来るもので、オレはすぐに声を張り上げた。





「もういいかー!?」


「もーいーよー!!」





背中にぶつかる田島の声。
貸し切りの公園でかくれんぼ、まだ五時にもならない、何も考えないで田島を探そう。
何がなんでも速効見つけてやる。
とにかく、見つけたかった。
そうでもなければ、オレの縮まった心臓が爆発しちまいそうで。
誰もいないのに、誰よりも早く、駆けつけたい。
不安な気持ちを、空から見下ろしてる奴は知ってるんだろうか。
気にくわないし、照れくさい。
照れくさいというか、恥ずかしい。
不安な気持ちはずっとずっと隠していたいにも関わらず、知れているなんて。
広くもない公園だから、少し見渡せば見つかるだろう。
遊具の下のほうに視線を向ければ案の定、細い足が覗いている。

―――見つけたって、言うだけなのに。

声をかけれない自分がいて、どうしようもない弱虫になってしまった。

見つけているのに見つけられない、これは本当にかくれんぼなんだろうか。
どこか遠くに行ってしまうような幻惑。










「泉。」









ふと、呼ぶ声がして顔を上げる。
田島は相変わらず錆びた滑り台の下で膝を抱えていた。










「…あんね、オレ、やっぱり遠くの大学行こうって思ってんの。」









ずしん、と圧し掛かる田島の声に、息がつまりそうだった。
そうではないかと思っていたし、そう言われた時、なんて答えようかずっと迷ってきて。

今もまだ、思いつかない。










「隠しててごめんな、でもなんかさ、伝えらんなかったんだよ。」









静かな声。
遠いけど、それでも幼い、オレに向けられた想い。
どうしたらいいのか迷って、オレは唐突に気付いた。
同じ気持ちなら、田島だって―――。











寂しい。









結論に至るなり、オレは滑り台の下で丸まる田島に駆け寄って、背から思い切り抱きしめた。
今俯いた顔を覗きこめば田島は怒るだろうけど、たぶん怒るだけだ。
怖くなんてない、少し強引に顔を寄せれば、目にはやっぱり雫がたまっている。
―――同じ気持ちでいるなら、寂しいに決まっている。
離れてしまう悲しさ、静けさをもたらすには十分な理由。










「…ゴーイン…。」


「うるせ、おめーだって十分強引だよ…―――ごめんな、オレ、気付いてたのに、言いだせねーで。」


「ちがっ…オレが今まで黙ってたから…!」






「いいから、田島。どこ行っても、オレちゃんと見つけてやっから。」





「…遠いんだぞ…?」





「知ってる、どんだけ離れても、おめーが隠れてても、絶対見つける。」




「………。」









「だから安心して行ってこいよ、ちゃんと見つける。」




「………ぜったいだかんな。」




「もちろん。」









満足げに笑みを零す田島の髪をゆるく透いて、抱きしめる。
今こうしていられることを噛み締めて、続いていくことを示して。
ずっと終わらせない、田島が待っているなら、オレは必ず見つけに行く。
ずっと忘れない、このかくれんぼ。











一番君に―――どんなに小さく隠れても、障害なんて目にも見えない恋心。









END








あれ…?なんだこれ/(^q^)\
泉攻め月間何もしてないのにどんどん進んでいく恐怖に負けてとにかく書かねば!と奮い立たせたらこんなことに…!
たぶん受験前の二人なんだと…思う…。