赤く輝かくどこまでも艶やかな球体。
一滴落ちた橙の光沢が麗しく、まるで磨かれた石のような存在感。
鮮やかな赤の光に、魅せられない人間がいるとは思えない。
そんな輝き。

だけど。

オレはその魅せられない人間の一人です。





朱色のコンフュジョン






一位を取ったはいいけど、どうして一位でこれ!?
オレはコレを食べるくらいなら、まだプロテイン飲んだほうがいいくらいだよ!!
あぁ、うん、確かに豪勢って意味では間違いなく一位の景品だけど。

イクラはない。

ありえない!
そりゃ、確かに魚卵が苦手とは…一切言ってないけど…篠岡には…。
というか、口走りそうなところを懸命に抑えたというか。

魚卵なんか、大嫌いだって言うのに!!
力いっぱい投げ捨てたい衝動に駆られて、だけどとりあえず踏みとどまる。
仮にもマネジが懸命に作ってくれたものを、投げ捨てるほうがおかしいわけで。
ぐ、と踏みとどまって。





「ね、ねぇ篠岡、これの中身だけど、ホントにイクラ?」

「え?そうだよ、今日の一等賞組はイクラ。」

「…なんで今日に限って?」

「今日に限って差し入れがあったの、それに。」

「?」



「栄口くん、魚卵苦手でしょ?イクラもじゃないかなーと思って。」





にっこり。
えええええええええええ。
なんで?
なんでバレて、っていうか何で篠岡はそれを知ってあえてイクラを?
なんて今日に限ってオレは一位を取って…!!
ちゃんと食べてねー、そう言って篠岡は行ってしまう。

篠岡ってこんな子だっけ。

まぁ、うちにいれば殺伐としてくる気持ちもわからないではないけど。
手のひらの上でほこほこと笑うイクラの仕込まれたおにぎり(語弊があっても気にしない)。
どうやって食べよう。
もう、この中にあの赤い物体が入ってるってだけでおかしくなりそう。
冷汗がだらだら。
そいえばこの前、花井と巣山はイチゴちゃんと食べてたし。
水谷も罰ゲームで怪しいおにぎり食べてたよな…。
ここで食べないといけないっていうのは、誰よりわかってるとは思うんだけど。
正直、無理。
イチゴのレベルじゃないよこの生臭さ!えぐいまでの赤色!!

目を、食べてるような気持ち悪い錯覚。
一種トラウマになりそうな食物で、味も生っぽくておいしくないし。

っていうか魚卵全般がそんな感じじゃない?

目が見ているようで、食べる気なんて一瞬で失せる。
どうしたものか。





「栄口、それ食わねぇの?」

「ぁ…泉…。」

「今日の一等イクラだぜ、栄口と同着だったからオレもイクラだったけど。」

「あぁ…泉はイクラ好きだったよね…。」

「?」

「これ食べる?」

「え…栄口、イクラ食えねぇの…?」





そんな驚きに満ちた顔で見なくても!
泉にしてみれば美味しいものでも、オレにしてみれば不味い以外の何物でもない。
どうせ食べるならフキがいい、フキ食べたい。
だから上げるよ、って、差し出してるのに泉はまったく受け取らない。
それどころか。

にーっこり笑って、差し出してオレの手首を握る。





「栄口、食べようぜ、残したら篠岡に悪ぃだろ?」

「いや、うん、それは分かってるよ、だから泉に上げるって…。」

「だーめ、栄口が食べるんだって。」







このドS…!!
口をついて出かけた言葉を飲み込んで、首を振る。
何が何でも食べたくない、絶対絶対いやだ!!






「ダメ、それとも何?オレに食べさせてほしいわけ?」

「な、なんでそんな方面に飛躍するんだよ!!」

「だってさぁ、未来の嫁さんがオレの好物食えないって困んだろ?」

「なっ、ばっ、何言って…!!」

「そういうこと、ほら、口あけて。」

「やだやだやだやだ!!」

「栄口、聞きわけ悪ぃと口に突っ込むぞ…。」

「…それも、やだ…。」

「じゃあ正直に口あける、あーん。」

「…い、や、だ…。」

「…ったく…往生際悪ぃなぁ…。」






そう言われても!!
無理なもんってあるでしょ!?泉にはないの!?
そうと問えば、泉はあるにはあるけど、それとこれとは関係なし。
言い切って、笑う。
手首を握って離さない泉としばらく問答して、唐突に泉はため息をついた。





「そいえばさ、目閉じて鼻つまんだら食べれるとかって、きかねぇ?」

「…あ、あぁ、言うね、視覚と嗅覚で何を食べたかわからなくさせるっていう。」

「とりあえずそれやってみようぜ、一口だけ。」

「…一口だけだよ、絶対一口だよ!!」

「わーってるよ、ほら、目閉じて、鼻も。」





これだけして一口なら問題ないだろ、たぶん。
そうと信じて目を閉じて、鼻もつまんでみる。
息苦しいから、早くして、やるなら早く。
数秒待って、唇にようやく何かが…え、柔らか―――。










「一粒くらいまったく問題ねぇだろ、次からちょっとずつ増やしていこうぜ。」

「…え…ぇ…え…?」





「ごっそーさま。」








食わされたの食われたのか、自分が今何食ったのかなんてもう分からない。
もう、なんというか、何で?
確かにイクラは食べれたけど。






「栄口!!今泉とチューしてただろ!!」






何で公衆の面前でするかな、いや、そうでなくても。
これはホントに混乱する、次回以降はしないでください。






朱色のコンフュジョン―――それがもたらす狂気の瞬間。










このために北海道物産展でイクラを買ってきたのは憂氷です(ぁ
食べ物ネタが多い件\(^o^)/
例によって、これはハナミズの世界だったりします、ありえないはずなのに\(^o^)/
ハナミズでイズサカです。
ついでに考えたのはアベタジとカノミハな世界でした、たぶんここはそんな世界。
何も変わってないのは巣西だけ\(^o^)/