両手を広げてはためくポーズ。

風を受ければ体は浮いて、あとは望むがままに飛んで行く。

そんなこと出来るのか。

たかだが人間に。







I can fly!








蒼天、晴れ渡る爽やかな空の下。
こんな気持ちのいい日は気の合う仲間と屋上で昼飯に限る。
言い出しっぺの4番は、さっさと弁当を空にして、じゃれあいに興じている。
オレも含めてみんな相当暇人なんだろう、見慣れた顔がきっちり10人。

確かに暇人だ。
もちろん教室に気の知れた相手がいないかと問われればそうでもない。
それよりも気の合う仲間がいるという話で。
もうじき夏休みにも入る頃、太陽はカンカンの日照り。
しかし風の心地よさは不快感を奪っていく。
もそもそと昼飯をかっくらい、めいめい足りなければ売店に行って、また帰ってくる。
田島もオレもすでに一往復済みで、みんなも一往復なんてとっくに終わっている。
売店のパン(120円)で適度に腹を満たして、あとはみんな好き勝手。

オレだけでなく阿部に西広、栄口もいるわけだから、田島と三橋には勉強をさせたいな。
言ったところで聞きはしないだろうが。
一応声かけてみよう。
袋に残っていたパンを詰め込んで嚥下。
床に座り込んで何やらしている田島と三橋に声をかけようと立ち上がった。
と、



「田島くんは、すごい、な!」

「へへーだろ、これくらいヨユーだって!」



一体何の話だ?
口を開こうとして不思議な会話に阻まれる。
そりゃ田島はすごいが、何が余裕なんだ?
頭を悩ませていると、二人の隣にいた泉が不意に顔を上げた。
オレが疑問符を飛ばしていることに気付いたんだろう、



「この前の練習試合の相手のな、うちと当たる前までの戦績、全部覚えてんだと。」

「あー…田島、こういうの得意だよな、何で勉強に使わねーんだか。」

「おもしろくねーからだろ。」



確かに的を射てる。
面白くないと絶対やらないな、コイツは。
なんだって面白いから着手する。
方程式の解き方も、面白いものと思い込ませたらコイツは余裕でやってのけるだろう。
頭悪いわけじゃねーんだよなぁ。
良くも悪くもすごい奴。



「でも、すごい、オレは全然覚えられない、よ!」

「こんなん簡単だって、三橋もできるよ。」

「そんなこと出来んの、田島くらいだと思うけどなぁ。」



対戦相手の戦績(それも一試合全部のスコア)を過去3年分くらい丸暗記出来るのはお前くらいだな。
普通やろうとすら思わないから。
田島のあっけらかんとして言ってのける姿に、栄口も苦笑している。
オレもズッコケてしまいそうだ、前もこんなことあったよな…。
爽快な青空の下で笑う姿は大変愛らしく見える(相当末期だ)のに、話してることは割に合わず変だ。
って、そんなことしてる場合じゃねぇ。



「田島、三橋、お前らはこれから勉強だぞ。」

「ええええーいいじゃん勉強なんてさー!」

「ダメだっての、ちょうど教えられるメンバー揃ってんだし。」

「でもオレも三橋も勉強道具なんて持って来てねーよ。」

「はぁ!?持ってこいっつったろ!?」

「こんな天気のいい日に勉強なんてやってらんねーよ!」



じゃあ雨が降ってりゃ勉強すんのかお前はよ。



「え?するわけねーじゃん!悪天候なのに!」



つまり天候にゃ左右されねーんだろうが。
盛大に肩を落としたオレに、栄口がぽんと肩を叩く。
仕方ないよな、もう達観だよな、諦めるしかねぇよな。

しばらくあーだこーだと説教してみた。
ちょっとくらい勉強しなきゃ脳みそ腐るぞとか。
じゃあ花井は息抜きしなきゃさらにハゲるな、と言われてみたり。
うるせぇこれは剃ってんだ!

それから少し説教して、そしたら田島は唐突に素直になった。
道具を取って来てくれたらやるというので、仕方なくオレは一度校舎内に戻った。
違和感を感じながらも、自分の教室から勉強道具を持ちだしてくる。
結局ノートやら何やら貸し出すことになるんだろうから、ルーズリーフを持ちだして。

再び屋上に戻ってきたオレは、とりあえず自分の目を疑った。


さっきまでいた面々が綺麗にいなくなっているのだ。
というより、田島一人を残して。

その田島はというと、フェンス目前の微妙な位置で、両手を広げて突っ立っている。

―――なんだってんだこりゃ。



「おい!田島!」

「んぁ?おー花井!お帰り!」

「お帰りじゃねぇ!他の奴らどうしたんだよ。」

「んなのとっくに逃げたに決まってんだろー。」

「…薄情者…。」

「花井が悪ぃー。」



何でオレが悪いんだよ、わけがわからん。
まぁ、そりゃ、こんな晴天の下で勉強しようなんて野暮ではあるけど。
テスト目前に控えて赤点組の心配したらいけないのか?

何か別の思惑があるような気もしないでもないが、田島だけでも残っているのはヨシとしよう。
間違いなく勉強をするために残っているわけじゃないんだろうけどな。
第一その気があったらいつまでも両手を広げて突っ立ってないだろう。



「で、お前は何してんの?」

「あーなんかね、最終形態は空飛べるんじゃねーかって。」

「はぁ?」

「水谷が言ってた。」

「意味がわかんねーよ。」



両手を広げたままフェンスに背を向けると、いつもの笑顔で口を開く。
なんとなく言葉のニュアンスで意味はわかったような気はするが、コイツにしろ水谷にしろ…。
根本的に頭の作りが違う気がしてならない。



「どうもオレすごいらしいから、人類初の単体飛行も夢じゃないとかなんとか。」

「…お前は骨格から何から人と違うのかよ。」

「ちげーよ!なんかこう、舞空術的な…。」



どっからそのネタ取ってくるんだよ。



「だからそういう不思議系のネタなんだって!」

「どういうネタかわかんねー…あーもう。」

「花井はロマンねーなぁ、もうちょっとで飛べそうな感じだったのに。」



落ちる気か馬鹿野郎。
いそいそと腕を畳んでフェンスを離れる。
はいはいどうせ空想に浸るほど少年じみちゃいねーっての。
誰もいないことをいいことに腕に絡みつく小さい体、頭を教科書で叩いてやると、不機嫌に唇をとがらす。

別に空飛べなくても十分すごいと思うけどな。

変なネタなんて持ちださなくても飛べてしまうような気がする。
ただ簡単に飛ばれてしまっては面白みがないので、空を隠してしまうように尖る唇を塞いでやった。







END






やおいってやつですね!(イキナリ
やまなし、おちなし、いみなし、という…なんだこれ/(^q^)\
鯨パラレル的なノリで書こうと思ったらパラレル過ぎて飛んですらいねー!←
憂氷の家には某サイヤ人アニメのDVDBOXがありますorz