最後に見たのいつだっけ。
無意味に意地張ってるオレが悪いの分かってんだけど。
だけど会いたくないし、ずっと引きこもっちゃってさ。
誰にも会いたくない、誰も彼も、煩わしくて仕方ないから。






Strage fall






しばらく人前に出たくなかった。
人づきあいなんて面倒の他何もない。
カノジョとか別に欲しくねぇし、どっちかってと野球出来てたらそれでいい。
打ってるのは楽しい、守ってるのは楽しい。
だけど人に会うのは憂鬱。
畜生、人数揃わないと野球出来ないんだもんな。
一人九役はさすがにちょっとハードル高いなぁ、ボール以上のスピードホームベースまで行かないといけないし。

じゃなくて。

だんだん憂鬱になっていく。
人と顔を合わせれば合わせるほど、いちいちムカツク笑顔を、全部殴って殴って。
消えやがれ!!
…なんて言えないし、オレって意外と小心なんじゃないか。
堂々めぐりして、何にも出来ないから結局引きこもり。
人の顔見なきゃストレスなんか出てこない。
思い出してもイライラするけど、実際会うよりずっとマシなわけだ。

泉の顔も、花井の顔も。

今見たら絶対ぶん殴る。
かれこれ2、3日顔合わせてないんじゃないかなぁ。
別に、合わせたくないからいいんだけど。
アイツらアイツらで勝手によろしくやってるだろうよ。
そうなったらオレ、あそこにいる意味なんてないわけで。

あぁバカバカしい!なんでこんなに頭使わないといけないわけ!?
それも花井と泉のために、馬鹿みたい。
オレが間にいねぇと二人で会うことも出来ないってか。
バッカじゃねぇの、って思うけど。

認めたくないけど、応援したい自分がいるのが、一番憂鬱。

だけど一度、愛されたくないスイッチ入ったら一直線。
もう他に出来たんだろ、ならオレはもういいだろ。
そうなったら終わり、オレがどんなに焦がれても、現実にオレは何もしない。
ただ罵って、さようなら。
そうしていつか風化していけばいいと、本気でそう悩んで。

報われなければいい。

望めばそりゃ、全部手に入るけど。
自信過剰?だって事実じゃん。
望まないうちに手に入るもんなてないわけで。
だからオレは、報われなければいい。
横暴で、我儘で、馬鹿で、どうしようもない人間だから。
そんな奴は痛い目だけ見てればいい。
オレの周りでひたすら幸せになって、オレを隙間に置いていけばいい。
全てを望んでしまえるから。

一度一つを望んだら、千は絶望を感じればいい。

そんな高望みをただ享受する自分が許せない。
ホントは、花井も泉も、オレが好きっていうだけでひっくり返せる自信、あるのに。
だけどそうしないのは、自分がただ不幸したいだけなのかも。
そりゃそうだ、不幸だって望めば手に入る。
不幸なんてのは自分にとっての価値観、人にしてみればそれは幸せ。
かもしれない、事実そんなことはどうでもいいんだけど。






花井も泉も、大嫌い。



それでいいじゃん。
そう思ってたら、オレはやっぱり一人になるだけで終わるし。
それが平和。
何もオレに付き合って、苦しい思いする必要ないわけだ。






「って思うわけ、どう思う?」

「さぁ、そんなの花井と泉に聞きなよ、オレに聞いたって仕方無いだろ。」

「なんだよ、せっかく相談してんのにさ。」






オレが唇を尖らせても、栄口は聞こえない振りをするだけだ。
変な奴、せっかく本気で相談しようと思ったのに。
どうも思わないよ、続けざまに栄口は言う。
まぁ、話したところで何が変わるだとか、思ってないんだけど。
栄口は別に、オレに関心があるわけじゃないし、オレも栄口も、ただの暇つぶし。
基本的に、お互いがどうだろうとどうでもいいくらいの思い。

―――っていう風に言えば、栄口はたぶん怒る。

全否定するんだ、どうでもよさそうな顔してるくせに。
オレはどっちかってと、栄口のためなら何したっていいくらいに思った時期もあったけど。
結局途中でイヤんなって、自分で勝手に区切りつけたりしたけども。
だけどちょっと今本気で相談したかったから、栄口に言ったのになぁ。

拗ねた顔で顔を背ければ、ようやく栄口は一つ溜息をついて、






「馬鹿なんじゃないの、田島。」






と言った、確かに馬鹿だけど。
さすがに傷ついて、正面からむ、とした眼で睨んでみても栄口は別に動じない。
ただ読んでいた本を放って、かけていたメガネをずらす。
第一引きこもりを引き出しに来て人ん家で本読んでる奴に常識があるのがおかしいよなぁ。
そうして一つ溜息をついてから、






「田島、馬鹿だよ。」

「…そんな何回も言わなくたってわかってるっての。」

「一回言っても分かんないから何回も言ってんでしょ、馬鹿だっつってんの。」






そりゃ馬鹿だけど。






「オレが知識の低さを諭したいわけじゃないくらいわかるだろ。」

「そりゃわかるよ、そんなとこ求めてねぇじゃん。」

「田島は性格が馬鹿だよね。」






馬鹿ですが、いいだろ別に、栄口に迷惑かけてねぇし。






「いや、迷惑。そんなこといちいち相談されても。」

「…マジで言ってんの?」



「とっくに答え出てんのに、逆にオレにどうしろっての?」






あぁ。
そういうこと。
当たり前じゃん、オレにつきあって苦労する必要なんてないよ。
それだけだろ。
うん、それだけ。

一回冷めたら、それまで。

さすがによくわかってるなぁ、と思いながら、栄口に笑う。
そしたら栄口も、笑った。
笑ってれば可愛い顔してんのに、どうしてぼろぼろぼろぼろ酷い言葉ばっか出てくるのかなぁ。






「ぐだぐだ悩んでる暇があったら、盛大に振ってきたら?」

「そうする。」

「まぁ。」

「?」

「二人はそれでも、田島のことおっかけ続けると思うけどね。」





そんなわけないじゃん。
二人にはもう、二人しか見えてないのに。

引きこもりは三日で終わり、栄口が来なかったらもっと長いこといたけど。
明日話に行こう、そう思うと、笑みがこぼれた。
心がすごく楽になるから。
栄口は何も言わずに微笑むと、オレの頭をがしがしと撫でた。
何が面白いのか、ただその手は気持ちいいから振り払わないけど。





「なー、結婚しねぇ?」

「しない、田島とするくらいなら水谷とする。」






酷い言いようだ、水谷しか眼中にないくせに。
じゃあオレ、帰るから。
そう言う栄口の背を見送って、オレは膝を抱えた。
さよならを告げるシュミレーション、考え始めたら止まらない。
不思議と堕ちる、考え始めたらひたすら行くだけ。





すきすきすきすき。


大嫌い。









Strage fall ――― 気持ちは全部、根絶やしに。





END








反映されすぎて嫌になる。
Strangeシリーズとしてもいっちょ続きます。
基本は栄口がべた惚れです、頭おかしいくらい。
水谷もべた惚れだけど、二人はべたの種類が違うというか。
栄口は人の家に来てまず時間共有を始めます、楽しい楽しい。