球技大会の当日。

うーん、足の間がすーすーする。

頭も結構重いなー、女の子ってたいへんだ。




ブレザートワイライト




より女の子っぽく。
篠岡はそのほうがいいよーというから、花井はウィッグまで用意してきたらしい。
はじめはウィッグって言われてなんかわかんなかったけど、あぁつまりカツラね。
ただちょっと花井は渋ってた。

「そのまんまでも十分だと思うんだけどな…。」

たぶん本人は無意識で呟いたんだろうから、突っ込まないでいてやろう。
や、でもオレは髪すっげー短いし、カツラはあった方がいいと思う。
そんなわけで用意されたのは、ポニーテールってやつだった。
あの日練習の後、モウレツに張り切りだした篠岡にオレ達は連れて回されていた。
服はどっちも篠岡が提供出来るという。

―――サイズは?
手直しするから大丈夫。

篠岡はすごい、オレでも10センチは差があるのに。
手直し程度で入るもんなのか…?
ってーか、手直ししていいもんなの?

いいよいいよ、礼服は礼服であるもん。

しのーかはすごいなぁ。
近場のデパートまで引っ張られて、カツラの専門店みたいなとこで小一時間頭を悩ませて。
オレは黒いロングのポニーテール。
三橋は茶色のツインテール。
そして、水谷は負けたにも関わらず茶色いセミロングのカツラを買っていた。

当日三日前、手直し終わった、と満面笑顔でオレのところに来たブレザー。
ついでに三橋のところに届けられた、セーラー服。
オレが着るんじゃなきゃ、どっちも単体で結構可愛い。

コーディネイト大会(?)にオレ達が出るのはいつの間にか知れ渡っていて、服も届いたとあれば熱気は最高潮だった。
今着ろそれ着ろという声を泉が一括して、場を収めたり。
なんか、大変だった。
浜田もお前ら大変だよなぁいろいろ、と他人事のように言うけど、確かにその通り。
奇異の目は別に痛くないんだけど。
試着と称して花井の前で着てみせたら、ばっちし食われたのは秘密。
あ、言ってら、オレ。



そして当日。



「んー…あんまり白すぎないくらいがいいよね、元気っ子に見せたいし。」

「あぁ、そうだな、あんまり白は強調させずに…。」

「じゃあ下地はこっちで、チークはオレンジ…。」

「派手じゃないか?」

「塗りたくるわけじゃないからね、大丈夫だよ。」


はたはたと筆が頬のほうを撫でる。
うー…くすぐった…。
化粧なんてものは生まれて初めてだ、や、男の身としてあるっていうのはどうかと思うけど。
気持ちいもんじゃーない。
三橋はもう準備が終わっていて、目を瞑っているからわからないけど、その辺にいるだろう。
うーん、変な感じ。



「田島くーん、目あけてていいよー?」

「んー、もう終わり?」

「まだダメ、睫と口がまだ。」

「えーっ。」

「これだけでも十分可愛いと思うけどね、でももう少しやらせてよー。」



視界の端で茶色の髪の毛がふよふよしている。
三橋だけど、三橋じゃないみたいに可愛い。
…オレもあんなん?
想像できねぇ。

ビューラーとかいうのが当てられたときはさすがにビビったけど、手際のいい篠岡はさっさと当てると終わってしまう。
目閉じないでねーという篠岡の声に気張って目をあけていたけど。
正直、いつぶっ刺さるんじゃないかと思ってひやひやしていた。


「紅は合わないね、オレンジのグロスくらいかなぁ。」

「厚塗りに見えねぇ?リップくらいでいいような気がするんだけど。」

「…オレさぁ、さっきからすげー気になってたんだけど、花井、なんでそんな詳しいわけ?」

「…母さんの影響、かな。」



よくわかんね。



「どうしよっか?」

「オレが塗るよ、篠岡に任せっぱなしじゃ立つ瀬ねぇからな。」

「はみ出すなよー。」

「出さねーよっ!」


篠岡持参の箱(他の女の子はそれよりもっとでかかった)から、見た目じゃ何かわからないものを取り出す花井。


「田島、ちょっと上向け、ちょっとだけ。」

「ちゅーするくらい?」

「ばっ…!!お前何言って…!!」


盛大に慌ててる、篠岡に隠すようなことでもないだろー。
実際、マネジだから知ってるんだーって言われてんのに。
だいたいそんな高さか、と位置づけて顔上げて。
口もちょっと開けろって言われるから、薄っすら開いて。
花井の目は真剣そのもの、からかってたことなんてもう忘れてんのかな?
塗れた重みのある筆が唇の上を撫でていく。



「似合うね、さすが花井くん!」

「…篠岡それ、どういう意味で言ってんの?」

「え?他意はないつもりだけど…。」


やっぱ篠岡ってすごい。
最後にぽす、とカツラを被せられて、向きを直したりして、篠岡の持ってきた鏡をのぞき込む。

―――誰だこれ?ってオレか!


「わーっ、すごい可愛い!女の子みたいだよ、田島くん!」

「しのーかぁ、それあんま嬉しくねーよぉ、でも三橋も可愛いな。」

「ユウちゃんとレンちゃんだね、ユニット組んじゃえば?」


篠岡ってホントすごいな。
鏡の向こうにいるオレは、胸に厚みがあればパーフェクトに女みたい。
三橋も同じ、ツインテールがふわふわしてて、超可愛い。



「三橋ーっ!着替えたかー!」

「おー阿部だ、追い出したまんまだったな。」



いちいちごちゃごちゃツッコミ入れるから、お前は出てろって追い出されてた。
三橋もびびって着替え始めねーし、まぁ正しい判断だよな。
返答してもないのに阿部は更衣室のドアを開けると、一瞬顔を呆けさせた。

Σちょ、マジで鼻血出てるじゃん!!


「阿部ー…勘弁してくれよ…。」

「や、三橋も可愛いんだけど、田島も相当可愛いもんだから…。」

「お前は三橋だけ見てろ!!」


わー花井が殴った。
へへ、ちょっと嬉しい。


「化粧も、これ篠岡一人で二人のやったの?」

「ううん、花井くんも手伝ってくれたよ。」

「ふーん、花井も変な趣味してんのな。」

「るせぇ!!趣味じゃない!!」


悪ぃけどオレも趣味なんじゃねーかって思うよ、花井。



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すごい勝手なイメージなんですが、花井は化粧が出来そうな気がしてならん(ぁ
母がやってるのを妹達が真似たがるんで、そのために練習させられたんじゃないかなーとかね。