大変恥ずかしいことながら、オレは今盛大に号泣している。
何が悲しかったかなんて聞かないでくれ、答える気にもならないほど。
それはそれはぐしゃぐしゃになった酷い顔、人に見せらたもんじゃない。

なのに、ノック音が涙の大洪水で溢れ返った部屋に飛び込んできた。




ラフ・メイカー




夕方からぽつぽつと降り始めた雨。
こんな薄ら寒い日になんだっていうんだ。


一体誰だったいうんだ、今何時だよ。
そんな遅い時間じゃないって?知らねぇ!
家の奴らには来るなっつってひきこもったのに、誰だ。
出ないままで放っておいたら、間を開けて再度ノック。
いい加減にしろ、追い返すつもりで、そのままの姿勢で声を出す。



「…誰だよ!ほっとけって言ったろ!!」

「うぉっ、起きてた!?」



―――なんでコイツ、うちにいるんだよ。
意味わかんねぇ、いつきた?今か?今なのか?




「お前なんでいるんだよ…。」

「ちょ、ちょっと待って、オレあれ!名乗るようなもんじゃないから!!」

「…はぁ?」



どう聞いたってお前の声じゃねぇか。
何が名乗るようなもんだよ、名乗るも何をオレはお前の名前知ってるし。


「えーっと、オレは人呼んで…えっと、ラフ・メイカーってやつ!」


「ラフ…メイカー?」

「花井に笑顔を持って来てやったんだ!!とりあえず寒ぃから中いれてくれよ!」

「…おつかれさん、オレはそんなもんいらねぇから帰ってくれ。」



冗談じゃない、オレはそんなもの呼んだ覚えはない。
構わず帰ってくれ、そこにいたら素直に大泣き出来ないだろう。
イライラと募る気持ちで床を叩く、下の階の住人なんぞ知ったことか。

しばらく音が消え、帰ったか、と思った瞬間。

ず、という小汚い水音。

あの野郎消えろって言ってんのに。
一体なんだっていうんだよ。




「そんな風に言われたの初めてだ…ひっじょーに悲しくなってきた。」

「…んだよ!!」

「どうしよー、泣きそうだ。」



う、と詰まるような声。
ひく、と喉を引き攣らせるような音。
なんだって、泣かれないといけないんだ。
泣きたいのはオレのほうだっていうのに、なんでお前の面倒まで見ないといけない!
すとん、腰を落とすような音。
扉越しでも想像できる、壁に背をつけて膝を抱えて?
ぐすぐす泣いている。
そんな状態で、どうやってオレを笑わせるっていうんだよ。

いつの間にかまたオレも再び泣きだしていて、二人分の泣き声がぐすぐすと続く。
雨の音が響くなかに、汚い泣き声が続く。

それでも音が消えることはなくて、いつまでそこにいるつもりだ?



「なぁおい、いつまでいるつもりだよ…っ。」

「ラフ・メイカーは笑わせんのが生き甲斐なんだよ、じゃなきゃ帰れねーのっ。」



―――馬鹿だ。
いつまでそんな変なものを名乗っているんだ?
冗談じゃない、仕方ない、今なら、入れてやってもいいか。

鍵を開ける、錠の落ちる音は、壁に寄り掛かっているなら聞こえるだろう。
扉をあけようとして、自分の水圧がそれを妨害する。
開かない、開けれれない。



「なぁ…外からドア、開けれねぇ?」



開けてもらったら、顔を合わせてやってもいい。


なのに。


返事がない、いつまで経っても。
冗談じゃない!今更オレを置いて消えやがった!
信じた瞬間―――裏切られた。

何がラフ・メイカーだ、ふざけやがって。
冗談じゃ―――。



ガラスの割れる轟音。
振り返ったそこ、外に続く窓が叩き割られていて。
からん、投げだされる鉄パイプ。



「へへ、笑顔持ってきたぜ!」



泣き顔で笑う。





「花井の泣き顔ウケるなー、ほらっ。」



小さな鏡、どこから取り出したのか突きつけられる。
暗闇に映るオレの顔。
呆れた、でもなるほど、確かにおかしなもんだ、笑える。



「笑えた?」

「…おー。」

「よかったよかった、泣きやんだからご褒美やるよっ。」



飛び込んでくる体、触れる唇。
一瞬の動作、降り込む雨なんか見えやしない。



「―――ったく、なんなんだよお前。」

「オレ?えーっと。」

「ラフ・メイカー?」

「そうそれ!」


「どう見てもお前は田島悠一郎じゃねーか、しかもオレが教えた奴だし。」

「夢がねーのー!」




呆れた奴だ、でも、笑えてしまったから、もういいや。

盛大に裏切られたつもりで、オレは声を出して大いに笑った。

窓のことを思えば、また気分も下がってくるのだけど。






END









花井…ばらすなよ(ぇええ
それはそれとして、ラフ・メイカー、謎な奴だ。
鉄パイプじゃなくてバットのほうがよかった?
田島…勇敢な子!
病みにおくか迷いました;;
ラフ・メイカーは歌詞がすごく好きですw