「ねぇ栄口、今日何の日か知ってる?」





まるで記念日






へろ、とした顔で頬杖ついて、間抜けな顔で幸せそうに。

…今日?ちょっと心当たりがない。
どこぞの国の独立記念日だとか、そんな話は聞いたことあるけど。
実際どうかは知らないし、オレが知らないことを水谷が知ってるなんて釈然としない。
ニコニコとオレの返答を待つ目は本当にただ楽しげ。
独立記念日も目眩がしそうな無邪気な笑顔、間違いなくそういう意味での記念日じゃあないんだろう。



「…何かの記念日?」

「んー、どこの国のカレンダーにも載ってないけど、オレん家のカレンダーには赤丸がしてあるんだよ。」



へら、とまた一つ笑って。
どういう意味だかさっぱり。
あくまでも平凡な一日だ、ただよく晴れた夏の日差しが気になるくらいで。
でもそれってオレ達が日焼けする程度の問題で、記念日だとか、そういうのは関係ないよね。
そんなことでにへら、と笑える理由には…いくら水谷でもない。



「ごめんけどわかんないよ、全然心当たりないな…。」

「へへー、オレも教えてもらったことなんだけどね?」



またいらんこと吹き込まれて。
阿部か?泉か?もう少し考えて教え込んでよね…。
野球部ってたいがい馬鹿が多い。
けど、水谷の人を疑わない心は、言い方を変えれば筋金入りの馬鹿なわけで。
何が楽しいのか、いろいろ吹き込まれては楽しそうに話す。
馬鹿だなぁ水谷って、その馬鹿を指摘するのは―――まぁそれはそれで楽しいわけなんだけなんだけど。




「今日はね、オレとさかえぐちの日。」




―――…正気かなぁ?
あぁでも嘘の類じゃないのはこの気の抜けた笑顔見ていればわかること。
あまりにも突飛だったがために変な顔こそすれ、たぶん本気で言ってるんだろう。
それでもオレの返答がないことに不安にでもなったのか、段々眉根を下げてオレの目を覗き込んでいる。

今日、今日って何日だっけ?
7、4…んーと…。



―――あぁ。







「誰に吹き込まれたんだよ、背番号。」


「そう!クラスの女の子が教えてくれたんだよ!」

「じゃあ4月7日でもいいんじゃないの?」

「ダメ!な気がする、その子も今日だから意味あるんだよーって言ってた。」




ホントにいらんこと吹き込まれて…。
どういう意味かわかってるのか?や、オレもちょっとわかんないんだけど。
7月4日、水谷が背番号7、オレが背番号4。
それだけでそんな嬉しげにしちゃってさ。




「いいでしょ?オレと栄口の日。」

「―――その原理じゃオレ以外の誰かだってあるだろ。」

「あ。」

「7月はまとめて水谷の月だろ。」

「…。」

「西浦だったら10日までみんなの日じゃん、大きいチームなら31日まできっちり埋まるよ。」


「うぅ…。」



呆れた奴だ、それくらい思いつかなかったのかなぁ。
それに西浦にだって他の部で7番なり4番なりいるわけで。
別にオレ達専用の日ってわけじゃない。
ホントに馬鹿なんだから、能天気にそんなこと言っちゃってさ。
―――まぁ、でも、ね。
気持ちは分からないでもないんだけど。



「…オレ、絶対記念日だと思ったんだけどなー…。」

「考え方が安易なんだよ、水谷は馬鹿だね。」

「うぅー…。」



あーもう、笑っちゃいそう。
いやなんかね、気づいちゃったら水谷の気持ちもわからないでもないっていうか。
むしろ、あー恥ずかしい!



「―――そういうの、恥ずかしい、し。…やだよ。」



つい、口をつく言葉。
言葉に顔が連動しないのはわかっているので、水谷の顔が一瞬ぽかん、として。
にーっ、と口端が上がる、わー嬉しそう。
オレも嬉しい、でもやっぱ恥ずかし。
かちあった視線から逃げるようにふいと顔を背ければ、追いかけてきたゆるい髪が頬を撫でる。
触れ合う箇所は、あちこち熱い。
馬鹿正直に目を閉じて、追いかけてきた目と目が、合わないように。


ある夏の日の午後のこと、あーそうか、夏が始まるんだな。







END







7/4水栄の日にmixiで書きなぐったものの加筆修正、やっぱり短い(笑々
あくまでまるでっていうか記念日よね!(ぇええ
病み部屋の連載放置して何してんだ私:;y=_| ̄|○・∵. ターン
や、夏が始まったから、夏らしいものを何個か書きたいなーとか…ね!←自重
ある夏の日の午後シリーズと名付けよう。うん(ぇえ