また会えること。




地平線に沈み行く強大な炎の塊を正面に、ふと小さく呟く。
空は今、薄く墨を引いたような色と、茜の染み出すような色に染め上げられていた。

細波を聞けば思い出す言葉。




「僕は、行けない。」




大丈夫、大丈夫。
また会える、もうすぐ。
もう一度。


細長く柔らかな金の髪が、さわさわと風に揺れる。
彼が傍で、髪に触れた懐かしい記憶とともに、波の狭間に消えていく。
それは水泡のように壊れやすく、夢のように儚かったが、それでも構わなかった。
脆ければ脆いほど大事に出来ると、確信しているから。

大丈夫、思いつめることなんてない。

地平を越えて沈む太陽は、段々と光りを弱くしていく。
まるで鼓動のように静まっていく、鮮烈な風景。
張り詰めたような雰囲気をまとっているが、その内心は実に穏やかだった。
焦る必要なんてない。






また会える、もうすぐ。





非論理的な考え方であっても、それが事実だから。
言葉にして、何度も何度も繰り返す。


もう一度会える。

君に。



遠く海に沈む、あの太陽もまた一巡りすれば出会えるように。
境界さえなければいいのだ、鏡と鏡が繋がるように。
ぶつかり合う波も、いずれは交わりあい、溶けていくように。


もう一度会える。

反芻する度に、心が燃え上がるような言葉だった。



あの漆黒に、もう一度。



足元に寄せては消え行く波が、ひたひたと寄ってくるけれど、気にもしなかった。
この大海は彼を飲み込んだのだ、恐れる必要なんてどこにもない。

例えば全ての起源が海にあるならば。
例えばその死が全て海に還るならば。


その向こうが、繋がる。



一人、小さく笑んだ。もう一度会えるのだ。
今度はきっと、もっとちゃんと、はっきりと彼を諌めよう。
間違いを正し、共に進むために。








もう二度と、失わないために。









屈み込んで触れる水は、途方もなく冷たい。
彼がこんなところに一人でいると思うと、それだけで胸が締め付けられた。
でももう心配ない、もう一度会えるから。
病的なまでのニュアンスをものともせず、何度も呟く。
あるいはすでに病だったのかもしれないが、それでも自分が正気であることをはっきり自覚できていると思っていた。
彼の死を認知していないわけではない、それほど愚かでもない。
彼の死を検めたわけではないが、直感的に悟っている。
避けようのない事実だった。



しかしそれが現実だったとしても、真実は違う。
真理とは一定ではないのだから。
だからいかにこれが病的で、愚かな思考とはいえ、やめることはなかった。

いや、全ては確信なのだ。
空になった器が満つるように、埋まっていく感触に。
思えば思うほど、気が狂いそうになる中でも耐えられるのは、再会を信じて憚らないからだ。
諦めないことは美徳である。

しかしそれは何の根拠も矛盾もなくはじき出された回答ではない。
全ては、直に繋がるのだから。




「二回は、失敗したんだったな…。」




一度は、説得に聞く耳もなかった。
勝手に悪者になって。
二度は、説得には応じた。あと少し早ければ、助けられたかもしれない。




「次は失敗しないよ、リオン。」





あまりに甘く、切ない声で。
風を裂くように呼べば、波は何度も寄せては返す。
スタンはそれに、満足げに微笑みを浮かべる。
もはやそれは、異常と呼べる行動ではない。
胸を裂くような切なさに溢れた、名を呼ぶ声。











もう一度会える、直ぐに。

もうすぐ、もうすぐ。

時を経て、ようやく繋がる。






「今度、こそ。」



運命を断ち切るために。





その向こうの




END





ディレクターズカット発売まで、後二十日。

ちょっとやりすぎた感じのあるスタリオ、とあるサイト様で見たものに触発されて書きました。
再会がテーマです、ほら、もうすぐ発売だから。
ちょっと哲学放り込みすぎました、でも書いてて楽しい。
発売までの間にちょこちょこスタリオ書きたいと思います。短くなると思いますが。