「ガイー。」
「…。」
「ガーイ。」
「…ルーク、ちょっと静かにしててくれないか?」
譜業隣人は日和の形
かれこれ数日。
仕事以外の時間にガイの姿を見た人間が何人いただろうか?
同室のペールじいさんなら見たかもしれない、が、ガイの主人に外ならないルークはこの数日見ていない。
仕事はしている、いつも以上にまじめに、いつも以上に手早く。
使用人の仕事をルークはよく知らない、けどガイはいつもそれを起用にこなして、開いた時間はルークにくれる。
退屈を持て余すルークにとってガイは必要不可欠(そんなこと絶対に言ってやらないが)で、いないと暇で暇で仕方がない。
ガイはとくに嫌がるそぶりもなく暇だと言えばいてくれたから、こんなに困ったことはなかった。
ガイが部屋に来ない。
それはルークにとって死活問題だった。
退屈は知っている、しかしガイのいない退屈は知らなかった。
とりあえず、数日は我慢してみた。
その間はヴァンが剣の稽古をつけてくれていたから、なんとか凌いだといってもいい。
我慢の嫌いなルークにとっては二度としたくない忍耐だ。
しかし、それでもガイは現れない。
日を追うごとにルークのイライラは増すばかりで、ガイは来ないし暇は募る。
ついにはヴァンも来れない日が来てしまって、ルークのイライラは頂点に達した。
「なぁ、ペール!ガイは何してんだよ、オレ、暇で仕方ねぇんだ!」
「これはルーク様、今日はヴァン謡将は…。」
「だぁぁっもう!ヴァン師匠が来ねぇからガイを探してんだよ!アイツもうずっと見てねぇんだけど!」
「ガイでしたら…―――。」
ペールは渋々口を開いた。
どうやらガイに口止めされていたらしい、主人に話さないとはどういう了見だ。
部屋で新しく手に入れた譜業を突き回しております。
ガイの譜業好きに関しては、偏執狂の域である。
それはルークもよくよく知っている、新しい玩具を見つけては嬉しげにルークの所に持ってくるくらいだ。
その長々と語る彼の姿も、暇つぶしには最適だというのに。
カツカツとブーツのかかとを鳴らして歩いていれば、メイド達がどうしたことかと首を傾げている。
ガイのことじゃない?
メイドの声が聞こえた、その通りだ。
もう何日引きこもったと…あれ?何日だっけ?
「ルーク様、ガイが引きこもってからもう6日も経ってるんですよ〜。」
「6日か…長ぇ。」
「新しい譜業がよっぽどいいものだったんですかね?」
「でも私達に見せてもくれないんですよ?」
普段なら見せてって言ったら見せてくれるのに。
アイツ、女性恐怖症なのにホントに女好きだな。
「ガイに会うんなら、ちゃんと出て来るように言ってくださいね、ルーク様。」
「ん。」
ルークはルークの暇が潰れればいいから、伝え忘れるかもしれないけど。
メイドが仕事に戻ると、ルークもまたブーツを鳴らしてガイとペールの共同部屋へ向かった。
部屋をちょっと強めに(あくまでちょっと、強烈ではない)ノックする、返答はない。
イラ。
問答無用で扉を足で蹴り飛ばした。
べき、と嫌な音がしたが、とりあえず今はどうでもいい。
無理矢理こじ開けた部屋の中には、ガイがいた。
何かそんな大きくもない箱を前にして、しかしルークを見るなり、げ、という顔をして固まっている。
「…ガーイ?」
「…何のご用でしょう?ルーク様?」
「テメェずっと引きこもって何してんだよ!おかげで超暇なんだぞ!」
「そりゃちょっと理不尽だって…。」
ガイは宥めるようにそう言ったが、すでに視線も手も譜業の方に戻ってしまっている。
実につまらない。
細かい作業をするためだろうか、ガイは眼鏡をかけていて、いつもと雰囲気が違う。
よくわからないが、工具を動かす顔はすごく楽しそうだった。
つまらない。
変に歪んだ扉を強引に閉めつつ、ガイから視線は離さない。
ルークがいることなどもう忘れてしまっているのだろう。
つまらないからガイの背後に回って、彼が背を預けているベッドにダイブ。
派手な音までさせているのに、ガイは見向きもしない。
「ガイー。」
「…。」
「ガーイー。」
「…。ルーク、少し静かにしててくれ。集中出来ない。」
かちん。
ルークはそんなに気は短くない(自称)が、その一言はむかついた。かなり。
使用人のくせに、主人は無視で玩具遊びかよ。
気がついたら手が出ていた。
手首を叩いたから、工具が落ちて地面に刺さる。
足首スレスレに突き立ったそれに、ガイも驚いてようやくこちらを振り返る。
怒られる。
「…ルーク、ダメだろ?こんなことしちゃ、危ないじゃないか。」
「っ。」
スパナを拾って、笑う。
何もなかったように。
「ガイのバーカッ!!お前なんかそれ足に立てて一人SMしてやがれ!!」
「はぁっ!?ルーク何言って…っ。」
「ガイのバッカ野郎!!」
飛び上がって逃げ出す。
さっき壊した壁をまた蹴り倒して。
心配して損した、期待して失敗した。
ガイの馬鹿、もう知らない。
「やっと見つけた…。」
結局夕暮れまでルークは隠れていた。
屋敷のメイド達は総出で彼を探し回った。
ルークは彼女らの声に頷くはずもなく、隠れていた。
「ほら。帰ろう、ルーク。みんな心配してるぞ?」
「…ガイの馬鹿。」
「あーぁーあーもう馬鹿でいいから、帰りますよ、ご主人様。」
木陰で隠れていたらガイに見つかった。
工具も持ってない、いつものガイ。
「お前なんか工具の角で頭ぶつけて男性恐怖症になれ…。」
「…それはどういう理屈だよ。」
「なんでもいいッ、ガイは譜業でも突いてたらいいだろ!!」
「…寂しかったのか?」
明日の天気はなんですか?
そんな声音で聞かないで。
「んなっ!?そんなわけねぇだろ!!」
「それはすまなかった、あの音機関はルークに渡すつもりでね。」
「そんなだからお前はっ…って、は…?」
馬鹿なんだ。言おうとしてやめた。
ガイが何だか照れ臭そうにしてるから。
渡すつもり?
「投影機って言うんだ。映像を記録した音盤を入れて再生すると、映像が見れる。」
「…それで?」
「退屈続きのご主人様に、しばし暇潰しの道具をと思いましてね。」
やっぱりガイは照れ臭そうにしている。
でもそれはルークもで。
「…じゃあ引きこもる前にそう言えよ。」
「驚かせたかった。」
「さっき行った時、嫌そうだった。」
「…いじくり回すのが楽しくなってて。」
「馬鹿か。」
笑う。
ガイも、ルークも。
「暇貯まってた分はきーっちり発散させてもらうからなァ?」
「えっ、それは困っ。」
「次の日の仕事は覚悟しとけよ!」
「ルーク!そこは気遣ってくれ!」
気遣う?足りないとでも?
明日の天気さえ君のために決めるのに。
END
ガイルク?いいえ、ルクガイルクです(爆死)
ルクに一人SMしてろって言わせたかっただけのお話だったりするとかしないとか。
うちのルクガイはガイ様が最終的に痛い目見るだけの不思議カプ(挑発オンリ
初めはガイ様攻めてんですよ、精神的に。
でも最後にパタリロ(違)して、ルクによっ掛かってルクが調子乗ります。
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