「ねぇ、アンタ婚約者いるんでしょ?」
「…それが?」
「こんなことしてて良いわけ?」
「…ギブアンドテイクだろう、こんなの。」
深く考えることすら馬鹿らしい、そう言うけれど。
罅割れの奥に
「アンタさ、ヴァンのことそんなに好きなの?」
「…好き、というか。尊敬だ、これは。」
初めてした会話にしては、味気のないものだった。
経歴としては、向こうのほうが長い。
一応、先輩にあたるというか、実力主義のここではあまり意味のない格付け。
尊敬に値するわけでもなく、ただその髪の赤さが幼子には鬱陶しかったから。
仮面の向こうに見えた顔は不機嫌そうだった。
よくもそんな馬鹿らしいことを聞く、とでも言いたげで。
僕にはどうでもよかった。
別に、コイツがヴァンに惚れていようがいまいが、僕の知るところではない。
ただこの状況が如何せん理解しにくかったから、誤魔化しも込めてだったというか。
何故か二人きり。
面倒見のいいリグレットやラルゴ、懐っこくてうざったいアリエッタとは普通に会話も出来るようになってはいた。
だけど、変人の類としか思えないディストや―――コイツとは一度も口を利いたことがない。
何故?面倒だから。
時に要領のいいことも話すかと思えば、むっつりと黙りこくってわけがわからない。
ディストに至っては気持ち悪いだけ、会話するだけ労力の無駄。
みんなは、各々の仕事で出て行ってしまった、つい今し方。
それまではリグレットとラルゴが気を回し、アリエッタが(迷惑だったけど)場を和ませたりもしていたから、別に居辛くはなかった。
ここでは異装だろうとなんだろうと、実力が全て。
回りも僕の仮面に慣れて来た。
なのに何故、今こんなにも気まずいのだろう。
赤毛が、アッシュがコーヒーの入ったカップを揺らす。
重苦しい沈黙。
迷った挙句あんなこと聞いて、僕は馬鹿?
否、こんな雰囲気にさせるアッシュが悪い。
一対一の場面でも尚、書類に目を落とすばかりで、ちらりとこっちを見たかと思えばすぐに視線を落とす。
僕は無視か?イライラする。
テーブルの上で手を組んで、顎を乗せる。書類をめくる紙擦れの音が部屋に響いた。
暇。
僕はまだ、あまり多くの仕事を回してもらってない。
知識はそこらの馬鹿よりある、だからこんなに偏屈になってしまっていて。
でも偏ってるから、仕事の仕方にはまだついていけないこともある。
何故?本来なら僕はまだ、両手足をついて歩いているはずの歳だから。
―――部屋で本でも読んでいよう。
こんな仕事馬鹿の顔見ていても、楽しくもなんともない。
一つため息をついて立ち上がる、が、不意に視界が開けた。
仮面越しの暗い景色が、突如光に覆われる。目の前には何故かあの赤毛があった。
「…何するんだよ。仮面、返して。」
「…聞いてはいたが、ホントにそっくりだな。」
「は?アンタに人の話をちゃんと聞く態度があったんだね、驚いた。」
どうやら、アッシュが指をかけて仮面を奪ったらしい。
簡単に外れるのもどうだろうか、少し丈夫なのを作ってもらわなくてはいけない。
なんでこんな馬鹿みたいなこと考えてるんだろ?
焦ってるから?
「導師イオンのレプリカ、な…。」
「それが、何?」
「いや、お互いレプリカ実験の被害者か、と思ってな。」
被害者?よく言う。
僕にはそんな意識はない、馬鹿げてる。
何もないんだから。
「被害者だって?馬鹿言わないでよね、そんな意識ないよ。」
「…。」
「別に僕は奪われてなんかないんだ、レプリカに。」
「…。」
「僕は被害者なんかじゃないよ。僕はヴァンに望まれて、ここにいるんだ。
アンタの尊敬する、ヴァン・グランツ謡将にね。」
まくし立てるように話して、想像するだけでも憎たらしい笑顔を浮かべてやった。
僕は望まれているんだ、ここに。
被験者イオンだって、みすみす死ぬのはって思ったから、僕らを残したんじゃないか。
それがたとえ―――。
「出来そこないの中から助け出されただけのくせに、随分強気だな。オリジナルもそんな性格だったか?」
「…出来そこない、だって?」
「じゃなきゃなんだ、自分たちの足で火口に飛び込まされてたじゃねぇか。」
知ったような顔で何を言うのか。
アッシュの顔には明らかな苛みが見て取れたけど、僕にしてみても今は全然余裕がなかった。
コイツに、こんな奴に。
「アンタこそ、そのレプリカ風情に自分の居場所取られてるんじゃない。
強気に偉そうなこと言えた口じゃないでしょ。」
「…なんだと?」
「アンタだって同じじゃないか、僕は初めから何もないだけ、アンタは奪われて空っぽ。」
「…。」
「何か違う?馬鹿みたい、そんなこと誇示して。」
アッシュの顔が怒りに染まるのが見て取れた、その髪みたいに、真赤な感情が沸いている。
知ったことじゃない、こっちだって同じだ。
けど、アッシュの反応は予想してたものとは違った。
仮面を握る手はそのままに、反対の手で僕の手を掴む。
呆気に取られているまま何故か談話室に備えてある大型のソファのところまで連れてこられた。
普段ならこの程度振り払えるけど、僕はわけがわからなくてなされるがままになってしまっていた。
それは失敗だったと、早く気付ければよかったんだけど。
乱暴にソファに投げ出されると、アッシュはそこでようやく仮面を手放した。
といっても、机のほうに向かって投げただけで、僕の手元には帰ってこなかったけど。
「…何?アッシュ?何考えて…。」
「黙ってろ。」
あれ?何で?これは、何?
肌が薄ら、あわ立つ。
あぁ、もしかしてこれは。
「泣き叫ぼうが、知ったことじゃねぇからな。挑発したのはお前だ。」
理不尽な、恐怖という感情なのかもしれない。
*
ぱち、小さな音だったけど、身の内に沸いた得体の知れない感情を揺さぶるには最適な音だった。
はじけたのは、首筋で合わせた教団服のボタン。
まだ新しいのに、頭の端っこでは、まだそんなのんきなことを考えている。
ボタンが飛ぶなんて自然現象があるか?否、あるはずない、飛ばしたのはアッシュだ。
一つ弾ければ服がはだけるのなんて一瞬で、首筋から胸元にかけてまで、突然寒気に襲われる。
何が、起きているのか?
理解できないでいる自分が悔しい、アッシュに優位を取られているせいか、この変な感情のせいか。
「ふん、さすがにわかんねぇらしいな。」
「な、…なんなんだよ、何がしたいわけ…?」
「黙ってりゃわかってくるだろうよ。」
そんな言葉でなんの解決になる、反論しようとして、僕は口を噤むことしか出来なかった。
アッシュの指が、開いた胸元を滑るように動く。
服の奥に隠された刺青を、緩い動きで手繰っている。
くすぐったい、けど、何でこんなことを?
「な…ぁ…アッシュ…?何…?」
答えはない。
アッシュの表情に怖気て、僕は顔を背けてしまう。
すると途端、アッシュはかがみこむと顔を首筋に触れさせた。
さすがに驚いて抵抗しようとすれば、あっさりと両手首を捕まれ、ソファに押し付けられてしまう。
力が抜ける。
露出した首筋を、アッシュの鼻筋が緩く抜けていく。また肌があわ立った。
鼻筋が掠めた部分を、今度は生暖かい、ざらりとした質感が通り抜ける。
状況の把握は出来ずとも、何をされているのかは分かった。
くすぐったい、やめてほしい。でも体が動かない、動かせない。
これは恐怖だ、確信を持って言えた。
「アッシュ…おねが…やめっ…。」
「どうせ誰も来やしねぇ。」
「…は…?そういうんじゃなくて…。」
人目の心配?そりゃ、服がこんななのは恥ずかしいけど。
ふと思い浮かんだ疑問を吹き飛ばすように、舌の動きはどんどん激しさを増していった。
首筋を、鎖骨を、果ては耳の辺りまでぞろりと動き、耳たぶを軽く噛まれる。
何なのか、よく、分からない。
説明が欲しかった、でもきっとアッシュは何も言ってくれない。
手にも力が入らなくなって、そのときようやく腕は束縛から開放される。
でも何故か、体が動かせない。
変な痺れが、抵抗を奪う。
「抵抗しねぇのか?」
「…っるさいな…そう思うんならやめろよ…!」
もちろん、返答はない。
だけど嫌な予感は積もる一方だった。
顔の位置は変わらず首筋にあるのに、手はいつのまにかわき腹のあたりをくすぐるように動いている。
でも、くすぐったいとは違う感じ。
体が震えてくる、アッシュの手が動くたび、舌が這うたび。
いつしか手の位置は胸板のあたりを掠める、飾り程度の突起を何度か掠めながら。
「は…ぁ…っ…んぅ…。」
「…。」
うめき声、とは違う、変な声。
これが自分の声かと思うと、何故か異様に恥ずかしい。
指が突起を跳ねるたびに、自分の声が少しずつ上ずっていく、何で?理解が及ばない。
始めは緩やかだった動きが、段々と激しさを増す。
首筋にあったアッシュの顔は今は胸板まで落ちてきて、吸い付くように突起に舌を這わしていた。
指も、止まらない。
熱い、体が。中心が少しずつ、熱を持っていく。
何で?全然分からない。
「っあ…ぁ…う…んんっ…!」
「…。」
「んぁっ…ぁあっ…あっ…!」
頭の芯まで、ぼやけてくる。
思考しようと脳を動かしたいのに、何故か停止する。止まる、考えられない。
気付けばいつの間にか上着は脱がされ、上半身は完全に露出。
服がソファの下に投げ捨てられるのを見たような、見てないような。
上着だけでは収まらないのか、アッシュはすでに次から次へと脱がす気らしく、服はもう原型を留めていない。
ほとんど全裸というか、足の先に下着がかかってるくらい。
けど気にしてる余裕はなかった、抵抗出来ないんだ。
だからアッシュが僕の中心に触れたときでさえ、僕はただ目を閉じて、芯を伝ってくる奇妙な感じに耐えることしか出来なかった。
「ゃ…ぁ…ふっぁ…あぁっ…!」
「…っ。」
アッシュの息を呑む音が、やたらと鮮明に聞こえた。
触れるだけじゃすまない、なぞるように動いたかと思えば、手のうちに納められる。
痛みではないけど、体は震える。
アッシュの手が上下し、それが段々激しさを増しても、僕は当然抵抗できなかった。
体のうちから沸く何かに、体ごと支配されている。
アッシュの威圧もさながら、この変な感じのほうがよっぽど厄介だった。
漏れる変な声のせいで、呼吸さえもままならないのに。
「あっ…ん…んんっ…ん…あぁっ…!!」
唇を噛み締めてみても、声は勝手に出てくる。
むしろ声を我慢するほうが、呼吸が出来なくて辛い。
「発達具合はやっぱり13か。」
「…ぁ…ぇ…?」
「気にするな。」
「…な、に…?」
「気にするなと言ってる。喋ってる余裕があるなら、後ろを向け。」
「…は、ぁ?」
よく分からなかったけど、アッシュが触れていない間は、変な感じはしない。
ただ、奇妙にも物足りなさを感じる。
混濁した意識では何かを考えることも出来なくて、アッシュの手を借りながら、僕は素直に背を向けた。
ソファの縁に寄りかかれば、多少体が楽だった。
少し気が抜ける。
そう思ったのもつかの間、アッシュは今度、今まで以上にわけのわからない場所に指を向けたのだ。
唐突過ぎて体が跳ねる、振り返ろうとすれば頭ごとソファに押し付けられた。
痛い。
表面を往来する、濡れた感じがするのはどうして?
「やめっ…やだ!アッシュ…やめろ…っ!!」
「少し、黙ってろ。」
とはいっても。
頭を押さえつける手は離れたが、今度はその手が中心を上下する。
膝の力が抜けないように意識を向ければ、今度は後ろの指が嫌な部分をなぞる。
心なしか水音が聞こえて、それがすごく嫌だった。
不意に、圧迫感が襲う。
「ぅ、あ…っく…!」
「痛いか?」
首を振る、痛くはない。痛みというより、苦しい。
痛烈な圧迫感で、呼吸が出来ない。
苦しくて苦しくて何度も深く息を吸った、その間、アッシュの指はどちらとも動かなかった。
終わった?違う。
息が整ったと見れば、前後の動きはすぐに再開する。
前は上下を、背後はより深く。
「ふぁっ…あぁっ…!や、ぁ…!」
動きは遅い、いつしか圧迫感が消え、またさっきまで変な感じが蘇ってくる。
何なんだろう?
アッシュのこともわからないし、この体の変な反応もわからない。
でも考えようと思えば思うほど、アッシュの指の動きを鮮明に感じてしまって出来なくなる。
指は止まらない、気付けば背後をあさっていた指は数を増やし、確実に3本は入っている。
なのに痛みはない、じわじわじわじわ、内が侵食されていく。
声が掠れてしまいそうだった、声が出なくて、喉が鳴る。
「ぅ、く…ぅんん…っ…!」
「…そろそろいいか。」
「え…っぁ…な、にが…?」
話し掛けるならせめて、指を止めてからにしてほしい。
そう懇願しようとした矢先、指を引き抜かれる。
「あっ…?」
「こっち向くんじゃねぇぞ、いいな。」
「え…え?なんで…?」
「いいから、こっち向くな。絶対だ。」
振り向こうとすればまた頭を押さえつけられる。
仕方ないから、精一杯視線を前に向ける。
何もされていないのに、それに物足りなさを感じるとはどういう了見だ。
理解出来ない、一体これは、どんな状況?
「―――痛かったら言え。」
「え?ぁくっ…!!」
「っ…。」
痛い。
口に出来るような、生半可なものじゃない。
身を裂かれるような、とてつもない痛み。
猛烈に熱い何かが、狭路を強引に押し分けて侵入してくる。
熱い、痛い。
拷問のようなものだった、実際に拷問を体験したわけじゃないけど、想像するだけでもそんな感じで。
声を上げることも出来なくて、閉じた目頭が痛いほど熱くなった。薄ら目を開けても、視界がどこかしらぼやけている。
これだけで終わりというわけでもないだろうに、アッシュは動かなかった。
いや、実際は少しずつ動いていたのかもしれない。
さっきのような強烈な痛みは引いたが、ひりひりした小さな苛立ちのような痛みは続いているから。
息も絶え絶えに、その侵入に絶えることしか出来ない。
アッシュが何を入れているのかまったく想像もつかないが、振り返って確かめるだけの気力もない。
隙間風のような細い息だけが聞こえる。
それが僕のものなのか、アッシュのものなのか、判別できないほど痛みに意識が奪われていた。
どれくらいの時間そうしていたのか、知る術もなかったけど。
唐突にアッシュが深い息をついたとき、少しだけ、この痛みが終わればいいのにと思ってしまった。
きっとまだ、終わらないのに。
「はぁ…っ…ぁ…はぁ…。」
「…辛いか?」
「ったりまえだろ…!アンタ、何入れてんのさっ…!!」
「知らなくていい、動かしても平気か?」
そんなこと、今更聞くのか。
「…アンタの好きなようにしたら。」
だからそっけなく、突き放すような返答しか出来なかった。
アッシュはしばらく動かなかったが、すぐにとんでもないことをしてくれた。
何か突き立てたまま、僕の体をアッシュの方へ向けさせたのだ。
当然痛い、今までスローペースだったのがあまりにも唐突すぎて、今までの数倍の痛みを訴えかける。
さすがに悲鳴じみた声を上げてしまった、けど、回転したあとアッシュは動かない。
僕は何故か、アッシュに抱きしめられている形になっていた。
アッシュの腕は僕の腰のあたりに回っているし、回転した拍子に支えを求めた結果か、僕の腕はアッシュの首筋に回っている。
もちろん下腹部は見えない、僕の足はアッシュの腿の上から垂れているから。
つまりいいように抱きかかえられている体勢。
部分は痛い、泣き叫びそうになるのを、唇をかみ締めて耐える。
アッシュは動かなかった、いつの間にか震える体を抱きしめるだけ抱きしめて、動こうともしない。
どうしていいか分からないし、僕としては痛みに溢れてくる涙のほうをどうにかしたかった。
かといって体を動かせば痛い、動けない。
「…痛いか?」
「っ痛いに決まってるだろ…!!なんで急に動かすんだ…!!」
「…悪かった。」
「…は…?」
何度も怒鳴りつけてやろうとして考えついた言葉が、霧散する。
アッシュの素直な態度のせいで、拍子抜けしてしまった。
赤い、長い髪が汗ばんだ肌を撫ででいく、なんだろう、落ち着く。
アッシュの頭が僕の頬のほうに寄ってきて、でも僕は避けなかった。
たぶん、痛いからだと思うけど。
「…もう動くぞ。」
「だから、そういうのもう今更。
何してるのかよくわかんないけど、終わらせるならさっさと終わらせてよね…。」
「―――――…だが、な。」
「…?」
小さすぎて、聞こえなかった。
問いただそうとした瞬間、下から突き上げる激しい圧迫感に襲われる。
ただ、痛みとは言えなかった。
内を擦り上げていく動きが、これは――――。
「んっ、あっ、あぁっ、ぁあぁっ…!!」
「っく…。」
「あぁっ、アッシュっ…やっ…ふぁあっ…!!」
さっきまであんなに痛かったのに、僕はまたあんな声を―――。
もっと甲高い、悲鳴のような声。
それを発しているのは自分なのに、どこか人事のようになっている自分がいる。
朦朧としすぎておかしくなったんじゃないだろうか?
それよりも、気付いてしまった。
この感じの正体、激しさを増せば増すほど、ようやく行為の意味さえ、霞みながらもわかってくる。
ただ突き上げてくる熱い塊の正体は、よく分からないのだけど。
アッシュの首にしがみついて、圧迫感と伴う感覚を必死で耐えた。
意識を繋ぎとめていないと、飛んでいってしまいそうな、高ぶりが迫ってくる。
揺さぶられるまま、目を閉じて、衝動に唇を噛み締める。
耳元でアッシュの息遣いが聞こえるのが、気恥ずかしくて仕方がない。
「っおい…!」
「んぁっ…な、に…っ?」
「目、閉じてろよっ…絶対開けんな…っ!」
「ふ、く…っなん、で…ぁあっ…!」
「いいから!あと、我慢すんなよっ。」
「だ、から…!」
「シンク!!いいから黙ってろ!!」
何のことだろう?わからないけど、言われたようにさらに強く目を閉じる。
我慢、っていうのはこの迫り来る衝動のことを指しているんだろうか?
ならいい、どうせこれ以上耐えれそうでもない。
一際強い衝撃の後、我慢を投げ捨てた瞬間、奥に熱い何かが流れ込んでくるのを感じた。
僕自身はその衝撃のせいで完全に意識が飛び、開放感と同時に、意識を飛ばした。
アッシュの声が、遠く聞こえる。
最後の最後で、ようやく名前を――――。
*
はっ、として目を覚ました時、そこは見慣れたような感じの天井でありながら、部屋には慣れない空気を感じた。
僕に与えられていた部屋はまだ物がほとんどない。
あの部屋が宛がわれてそう時間が経っていないことが一番の理由だ。
だけど今いるこの部屋は物が少ないながらも、確かな生活観がある。
談話室の広い天井とも違う、一個人のためのスペース。
誰の部屋だろう?そういえば仮面もない。
慌てて起き上がろうとして、強烈な腰の痛みにベッドの上に再び倒れこむ。
「…起きたのか?」
響くアルト。
ようやくこの部屋の主に気付いた、アッシュは少し離れた位置で椅子に腰掛け、書類に目を通していたらしい。
僕が起きたことに気付くなり紙の束を机に置いて、ブーツを鳴らし歩いてくる。
腰の痛みに耐えながら起きようとすれば、寝ていろとの静止。
渋々体勢を変えるだけに留め、アッシュの方に向き直る。
彼は何故か、前髪が下りていた。
それだけで別人のような違和感があったけど、僕は口にしなかった。
「しばらくは動けないだろ、ここで寝ていけ。」
「…他のみんなは?」
「ボケたのか?ディスト以外、長期遠征に出たじゃねぇか。ヴァンも含めてな。」
そう言えばそう。
その間僕には仕事がないから、大体2週間くらいはのんびり出来る、とか思っていたのに。
幸先の悪いスタートだった、と共に、ついさっきまでの痴態がふと頭を過ぎる、途端に気恥ずかしさが再来する。
「…あの後、誰かに見られちゃ困るんだろうと思って、とりあえず俺の部屋に運んでおいた。
一応風呂にもいれたから。仮面はあそこだ。」
一口に言い切り、机の上を指差す。
鈍く光る金属を確かめて、僕はようやく息をついた。
そこで、風呂、という単語が妙に引っかかったが、引かないで置く。
「…お前は知識が偏りすぎだ。」
「悪いね、これでもまだ1歳なんだ、一年でこれだけ詰め込めただけ誉めてほしいところだよ。」
「減らず口。」
「ほっといて。」
ふい、と顔を背ける。
視線の端に映るアッシュの顔色は、なんだか切なげに見えた。
きっと気のせいだ。
「で、何されてたかはわかってんのか?」
「まぁ、大体分かったようなわかってないような?」
「…はぁ?」
「なんというか、多分気持ちよかったというか。あちこち痛いんだけど。」
「…。」
視線を向ければ、アッシュは驚いたような顔をしている。
そんなに変なことを言ってしまったのだろうか?
鉄面皮の体言であるアッシュのこんな顔が見れて役得、と思っておくしかない。
「…あんまり挑発的なことを言うな。」
「アンタが言うから買ってるだけ。」
「…いいか、ここから最低2週間。神託の盾には俺たちくらいしかいなくなる。
ディストの馬鹿はどうせ研究室にこもってやがるからな。」
「…それ、が?」
「あんまり減らず口が酷いと、痛い目見るのはテメェだと言ってるんだ。」
「…。」
脅し、かと思えば、そうでもないらしい。
アッシュは笑っていた、皮肉げに、でもどこか、悲しげに。
意図がつかめなくて、僕はなんの返答も出来なかった。
でも、幸先が悪いことには変わりない、ここから先2週間、自分がどういう扱いになるかも、なんとなく想像出来てしまう。
けどどうしてだろう、なら嫌といえばいいのに。
逆らうように、出来ていないからか。
否、逆らえないように出来ているからか。
僕が没頭している間、アッシュはやはり悲しげに視線を細めていた。
ふと思い出すのは、焦り返した様子で、僕の名前を呼ぶ淵の向こうの君。
END
何でワタシば初アシュ×シンでR-18を書いたんだろう?
すげえ!!超突発的!!( ゚д゚ )ニ゙ッ!!!!
いやね、ただ猛烈にエロが書きたかったんですよ、えぇ(暴露すな)
前はまりのネタでは書いてたんですが、テイルズにはまってから、なんかより純朴なほうに目覚めてたんですよ…。
カイルとか、出来れば無垢に!って思ってたせいか、ネタはあるのにR指定で書けないスランプでして(?)
前回のルクガイではちょっとそういう方面行こうと思ってたのに。
やっぱり外では出来ないヘタレ坊ちゃんのせいで無理でした(ルクのせいにすな)
というわけでオリジナルに頑張ってもらいました、鬼畜アッシュが大好きです。
ちなみにアビスキャラではガイ様の次点でシンクが着ます、シンク大好きですシンク。
アシュシンは萌えるのに如何せんマイナーということで、えぇ自給自足で頑張ります。
というかね、シンクはツンデレドMだと思って疑わないよ( ゚д゚ )ニ゙ッ!!!!
アッスによるシンク調教生活スタートの兆し、多分これ短編構成で続きます。
エロばっかり、エロばっかり(ヤメテ
ちなみに、シンクが生まれて一年目くらいな感じで書いてます。なのでみんな一歳ずつ若いです。
無垢なシンクに対してアッシュは何がしたいんだ(オマエガナ-
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